2024 年 67 巻 5 号 p. 147-157
本総説では,水素キャリアとしてギ酸を使用する最近の進歩について著者の成果も含めて紹介する。ギ酸の脱水素触媒は,均一系触媒,不均一系触媒と様々であるが,特に効率的な高圧ガス生成のための均一系金属錯体触媒に焦点を当てている。ギ酸は水素キャリアとして簡便に水素ガスを生成する能力があるが,実際の生成ガスはH2と50 % CO2 を含む混合物であるため,水素燃料電池などへの適応が難しい。しかし,イリジウム錯体触媒などはギ酸から100 MPa以上の高圧ガスを簡単に生成できるため,発生したガスを高圧下で気液分離することが可能になる。実際にH2とCO2 を簡単に分離できるようになった。この技術により,ギ酸が水素キャリアとして利用できる可能性が非常に高まっており,将来は水素ステーションを含むインフラ向けにカスタマイズされた水素供給システムが社会実装されることが期待される。さらに,高圧下で気液分離された高純度二酸化炭素は,さまざまな分野での利用が可能になるので,持続可能な化学処理およびエネルギーソリューションに向けた重要な一歩になるものと期待している。