石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
プロピレン-プロパン系気液平衡データの評価および相関
〓 孝廣長浜 邦雄平田 光穂
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1978 年 21 巻 4 号 p. 249-256

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抄録
工業的に重要な高純度プロピレンを得るために不可欠なプロピレン-プロパン系の気液平衡データの評価および相関を行った。プロピレンおよびプロパンはその物理的類似性によって, プロパンに対するプロピレンの相対揮発度が1に近く, 気液平衡データにおける少しの相違によって蒸留塔の設計所用段階が大きく影響されることが知られている。
上記2成分系の気液平衡データについては, 1952年に Hanson ら1)が測定して以来, 現在までに7件の報告1)~7)がある。その温度, 圧力の範囲は各々-50~88°C, 0.8~42atmである(Table 1)。Funk ら10)は文献1)~5)までの測定データに基づき, プロピレン-プロパン系の相対揮発度を計算する相関式を提出した。しかし, 著者らが精度の高いデータと考えているManley ら6), Laurance ら7)のデータはその相関に用いていない。そこで, 既報の定温データ (実験誤差が大きい Hanson ら1)のデータを除いて) を用いて, 各々のデータの熱力学的健全性のテストを行った。健全性テストつまりデータの熱力学的評価は最近よく用いられる方法8),9)を適用した。つまり, 気液平衡データ (P, T, x, y) の中で, yは他に比べ実験上最も誤差が大きいと考え, 残りのP-T-xデータに最も合うよう液相における2成分系パラメーター (Eq. (4) 中の (λ1211), (λ1222) あるいはEq. (15) 中のθ12) を求め, それによって間接的に気相組成を計算し, それと実験データの気相組成とを比較して, その偏差の大きさによってデータを評価する方法である。
この計算は, 液相および気相の非理想性を考慮するために, 液相に活量係数γ, 気相にフガシチ係数φを用いる方法 (Eq. (1)) および両相に同一の状態方程式を用いる方法 (Eq. (17))で行った。なお前者のφの計算は圧力展開形の第2ビリヤル式 (Eq. (5)) を用いる方法1, 容積展開形の第2ビリヤル式(Eq. (8)) を用いる方法2および修正 Redlich-Kwong (R-K) 式 (Eq. (10)) を用いる方法3の各々の方法で行った。また後者では修正R-K式 (Eq. (10)~(15)) のみを用いた (方法4)。計算結果 (Table 2) から, 方法3が気液平衡データを最もよく表していることがわかる。Table 2の結果から, *印のデータはΔy, ΔPとも少し大きめであり, データの健全性に疑いがあると考えられる。
Fig. 3には方法3によって得た Wilson パラメーターの温度依存性を表した。この中で上述の*印のデータを除いて直線近似したのが, Eq. (18), (19) である。この式を用いて, 方法3によって逆に気液平衡を計算すると, 気相のモル分率については0.0013, 圧力については0.014atmの平均偏差で実測値と一致する。この大きさはほぼ実験誤差範囲内と考えられる。Fig. 5にはEq. (18), (19) によって計算した相対揮発度とFunk ら10)のそれとを比較したもので, 工業的操作範囲と考えられる15~20atm付近では多少の差がみられる。この原因はデータの相関法の違いよりもむしろ用いたデータの相違によるものと考えられ, 本研究によって得られた相関結果の方がより有用と考えられる。
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