石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
遷移金属触媒上での一酸化炭素の水素化による気体炭化水素の合成 (第2報)
グラファイト担持鉄触媒の活性と選択性
菊地 英一井野 隆伊藤 直之森田 義郎
著者情報
ジャーナル フリー

1978 年 21 巻 4 号 p. 242-248

詳細
抄録
種々の鉄触媒を用いて合成ガスからの炭化水素合成反応を行い, その触媒活性と選択性につき検討した。反応は固定床流通循環反応装置を用いて行った。リアクターの詳細は引用文献6)に示されている。実験条件はすべて常圧, 400°C, 原料組成H2/CO=3(mol/mol)である。
シリカ, アルミナ, 活性炭およびグラファイトに担持した鉄触媒と沈殿鉄触媒の活性, 選択性を調べた結果, Table 1に示す結果を得た。ここでX, XHCはそれぞれCOの反応率とCOの炭化水素への転化率であり, 反応速度rおよび炭化水素への選択性SはEqs. (4), (5) のように定義される。
r=XHC/W/F•1/触媒中の鉄の重量百分率 (4)
S(%)=XHC/X×100 (5)
ここで反応速度rを触媒活性と定義した。いずれの触媒においても主成物はメタンであるが, グラファイト担持鉄触媒ではメタンに加えC2, C3炭化水素も比較的高い選択率で合成された。これらの触媒の中では, 鉄重量あたりの反応速度はグラファイト担持鉄触媒が最も高く活性炭担持触媒が最も低い。他の触媒はほぼ同じ活性であった。
グラファイト担持鉄触媒は前処理の条件により選択性が大きく影響され, 350~500°Cで空気焼成した場合, C2, C3炭化水素への選択性が最も高くなった。しかし活性には大きな変化は見られなかった (Table 2)。
一般に, 鉄触媒はアルカリ酸化物のような電子供与性化合物の添加により触媒活性が促進されることが知られている1)。ところで, グラファイト担持鉄触媒の活性は少量のアルカリ (K2CO3) を添加することにより著しく促進され, アルカリ添加量1wt%のときXHCは最大となり無添加触媒の3倍となった (Fig. 5)。しかしアルカリ添加触媒では炭素析出が激しく無添加触媒に比べて炭化水素への選択性は低下した。COの不均化による炭素析出反応に対して触媒活性をもつ金属では, 炭素析出は金属カーバイドを経由して進行するとされている12)~14)。すなわち,
3Fe+2CO→Fe3C+CO2 (6)
Fe3C→3Fe+C (7)
したがってアルカリ添加した触媒を用いたとき炭素析出が著しいのはアルカリが Eq. (7) のカーバイド化を促進しているためと思われる。
グラファイト担持鉄触媒において, その担体であるグラファイトの種類を変えることにより, 触媒の選択性が変化し, 生成物分布に影響を与えることが見いだされた。人造グラファイトの物理的性質および構造はその原料あるいはグラファイト生成過程の熱履歴に大きく依存する。X線回折より求めた種々のグラファイトのP-値, La, Lc, La/LcをそのBET表面積とともに Table 3に示した。ここでP-値とは不規則的に積み重なったグラファイト層の割合であり, LaおよびLcはそれぞれグラファイトのa軸およびc軸方向の平均結晶子径である。これらのグラファイトに鉄を5wt%担持した触媒を用いて反応を行った結果, 活性とグラファイトの物理的性質との間には相関性は見られなかったが, C2, C3炭化水素への選択性とLa/Lc値との間には良い直線関係が認められた。グラファイトの電気抵抗は異方性であり, グラファイト層に対して垂直方向の電気抵抗は平行方向のそれよりも100~1,000倍大きい。したがってLa/Lc値の変化はグラファイトと鉄の相互作用の程度を変化させることが予想され, それによって炭化水素分布も変化するものと考えられる。
著者関連情報
© 公益社団法人石油学会
前の記事 次の記事
feedback
Top