石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
耐摩耗剤としての有機スズ化合物
広中 清一郎
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1981 年 24 巻 4 号 p. 241-245

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抄録

境界潤滑条件において種々の有機スズ化合物の耐摩耗性がボール/ディスク型摩擦試験機を用いて検討された。ほとんどの有機スズ化合物は市販の耐摩耗剤としてのZn-ジアルキルジチオホスフェートよりも低摩擦と低摩耗を示した (Table 1Fig. 1)。摩耗面の顕微鏡写真 (Fig. 2) では, ジ-n-オクチルSnジラウレートによる摩耗面が基油またはZn-ジアルキルジチオホスフェートによる摩耗面より非常になめらかで, これは低摩擦および低摩耗とよく相関している。この種の有機スズ化合物の耐摩耗剤としての作用機構の一つとして, 分子中の極性基による分子の金属表面への吸着が考えられ, 分子中の極性部分の割合によって耐摩耗性が異なる (Fig. 3)。Fig. 4の定常摩耗領域における摩耗率は10-12~10-11mm3/mm程度で非常に小さく, これは有機スズ化合物の耐摩耗性を良く説明している。またこの耐摩耗性は比較的低い添加濃度でも維持され, 常温から約85°Cの油温領域でもほとんど変らなかった (Figs. 5, 6)。
油に対するジ-n-オクチルSnジラウレートの酸化防止性が示差熱分析によって定性的に検討された。基油の酸化による発熱ピークが現れ始める温度が150°Cであるのに対して, ジ-n-オクチルSnジラウレートの1.0wt%添加油のそれは174°Cであり, 有機スズ化合物の中には油への酸化抑制効果を有するものもあることがわかった。

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