石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
24 巻, 4 号
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  • アスファルト混合物の変形特性, とくにクリープ特性について
    牛尾 俊介, 菅原 照雄
    1981 年 24 巻 4 号 p. 209-218
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    アスファルト舗装のわだち掘れに対しての対策が急がれている。アスファルト混合物の変形特性(クリープ特性)を知る目的で静的クリープ, ホイールトラッキング, 曲げクリープ, 曲げの各試験による試験結果をアスファルトのスチフネス (Sbit) とアスファルト混合物のスチフネス (Smix) なる共通の指標を用いて解析し, 表層用アスファルト混合物の比較的高い温度領域 (Sbitの小さい領域) におけるクリープ曲線が得られた。クリープ曲線は混合物の種類, すなわち骨材粒度, 配合よりもアスファルトのスチフネス (または粘度) によって大きく支配され, わだち掘れの現象に対してアスファルトのスチフネスが大きな支配要因であることを明らかにした。
  • 水溶液中からの重金属イオンの除去のためのマンガンノジュールの吸着特性
    新田 昌弘, 黒河 雄幸, 青村 和夫
    1981 年 24 巻 4 号 p. 219-225
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    新しい金属資源として注目されているマンガン団塊は, 種々の金属を含有し, 多孔質であることから, 触媒6)~7), および, 吸着剤8)~9)としての用途が期待される。本報では, 工場廃水などに含有される汚染物質の一つである有害重金属イオンの吸着剤としての利用を目的として, 酸性水溶液内における吸着特性を調べ, さらに, 他の吸着剤との比較検討を行った。
    マンガン団塊は溶液の初期pH=3.0以下でその構成成分である金属を多量に溶出するため, 吸着は初期pH=3.0以上で行う必要がある (Fig. 1)。粒度の影響を検討したところ, 150メッシュ以上では, 吸着速度は拡散が律速となった (Table 2)。吸着平衡に達するのに約18時間を要したが, 初期の吸着はすみやかであり, 吸着開始後, 1時間で平衡吸着量の約83%が吸着される (Fig. 2)。吸着は部分的に不可逆であり, 吸着された重金属イオンの完全な回収は難しい (Fig. 3)。水溶液中にアニオン種として存在するCr(VI)は吸着されなかった。Cr(III) は吸着されるものの, 溶液内残留イオンのCr(VI) への酸化と, 団塊を構成するマンガンの多量の溶出が観測された。これは団塊表面に存在する過剰酸素7)によってCr(III)が酸化され, それに伴って団塊の構造破壊が起こったことを示唆した。他方, 溶液内にカチオン種として存在するPb(II), Cd(II), Zn(II)と, HgCl2の形態を取っているHg(II)は良く吸着され, ラングミュア等温式に従った (Fig. 4)。これらの飽和吸着量 (Table 3) は, 他の吸着剤との比較 (Table 5) および他の研究者ら1),3),4)の結果に対してそん色なく, マンガン団塊の重金属イオンの吸着剤としての有用性を示している。処理温度の異なる団塊についてCd(II)の飽和吸着量は比表面積に依存しなかった (Fig. 5, Table 4) ことから, 吸着量は主に団塊表面に存在する過剰酸素量と相関関係を有することが推定された。処理温度の変化に伴う両者の変化は一致しており(Fig. 5), 明らかに重金属イオンが主に過剰酸素上に吸着することを示し, 団塊の吸着能は過剰酸素の定量によって予測しうることを示した。
  • 各種残油の反応性比較
    戸河里 脩, 細野 太郎, 中村 宗和
    1981 年 24 巻 4 号 p. 226-232
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    各種常圧残油のHDN反応性を比較する目的で, おのおの約1ヵ月の Micro Reactor Test を実施した。実験は原料油: 中東系3種および中国系2種, 触媒: Ni-Mo-Al2O3-B2O3, 反応温度: 400°C, 全圧: 140kg/cm2•G, 液空間速度: 0.5hr-1, ガス液比: 2,000Nl/lで行った。
    いずれの残油も反応初期約300時間の劣化過程を経て, 安定活性に至り, 劣化度合も油種による差は認められなかった。HDN反応性の序列は AL-RC>KW-RC≈GS-RC>TA-RC>SH-RCで, これはまたHDS反応性序列とも等しいものであった。原料油と生成油は四つの留分に分けて相互に比較することによって, 反応性の差異を与える要因やHDN反応機構についても考察した。
  • 藤元 薫, 亀山 正隆, 阿部 嘉彦, 功刀 泰碩
    1981 年 24 巻 4 号 p. 233-240
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    各種アルミナおよびシリカ•アルミナに担持したロジウムを触媒として, 一酸化炭素の気相水素化反応による炭化水素の合成を行い, 生成物の選択性に対する担体あるいは温度, 圧力, H2/COモル比等の操作因子の効果について検討した。またRh/Al2O3触媒に対するアルカリ金属化合物および各種塩素化合物の添加効果についても検討した。ロジウム触媒上での生成物はメタンが約50%, その他C2~C6の飽和, 不飽和の炭化水素が生成した。水素が増すか, 温度が上昇すると生成物が低分子量となり, オレフィンが減少した。アルカリを添加すると生成物が高分子量となり, 塩素イオンが添加されると高分子量物が増すと同時にオレフィンの含有率が著しく増大した。
  • 広中 清一郎
    1981 年 24 巻 4 号 p. 241-245
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    境界潤滑条件において種々の有機スズ化合物の耐摩耗性がボール/ディスク型摩擦試験機を用いて検討された。ほとんどの有機スズ化合物は市販の耐摩耗剤としてのZn-ジアルキルジチオホスフェートよりも低摩擦と低摩耗を示した (Table 1Fig. 1)。摩耗面の顕微鏡写真 (Fig. 2) では, ジ-n-オクチルSnジラウレートによる摩耗面が基油またはZn-ジアルキルジチオホスフェートによる摩耗面より非常になめらかで, これは低摩擦および低摩耗とよく相関している。この種の有機スズ化合物の耐摩耗剤としての作用機構の一つとして, 分子中の極性基による分子の金属表面への吸着が考えられ, 分子中の極性部分の割合によって耐摩耗性が異なる (Fig. 3)。Fig. 4の定常摩耗領域における摩耗率は10-12~10-11mm3/mm程度で非常に小さく, これは有機スズ化合物の耐摩耗性を良く説明している。またこの耐摩耗性は比較的低い添加濃度でも維持され, 常温から約85°Cの油温領域でもほとんど変らなかった (Figs. 5, 6)。
    油に対するジ-n-オクチルSnジラウレートの酸化防止性が示差熱分析によって定性的に検討された。基油の酸化による発熱ピークが現れ始める温度が150°Cであるのに対して, ジ-n-オクチルSnジラウレートの1.0wt%添加油のそれは174°Cであり, 有機スズ化合物の中には油への酸化抑制効果を有するものもあることがわかった。
  • スチレン-ブタジエンゴム混合アスファルトの溶存特性および物性
    脇阪 三郎
    1981 年 24 巻 4 号 p. 246-252
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    パラフィン系 (クウェート), ナフテン系 (コーリンガ) のアスファルトへSBRを混合した試料の溶存特性等を粘度測定, 顕微鏡観察を中心に議論した。その結果, SBRの溶存形態として顕微鏡観察から半相分離と完全相分離を定義づけ, コーリンガ混合系には完全相分離分が認められずクウェートよりも溶解能は優れていることを明らかにした。この結果は低温•常温物性にも反映されていた。またクウェート混合系の昇温にともなうSBR混合量による溶解特性は, まず半相分離分がアスファルトの溶媒和効果の増加により溶解し続いて完全相分離分の溶解が起こり, 混合量増加にともない半相分離分は粘度低下率を大とし, 完全相分離分は粘度低下率を小とした。
  • 触媒物性の経時変化と活性低下との関係
    野村 宏次, 澤部 寿宏, 関戸 容夫, 大口 豊
    1981 年 24 巻 4 号 p. 253-259
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    重油の水素化脱硫触媒の劣化原因を触媒物性の経時変化から検討した。その結果, バナジウムのたい積は触媒層入口部分また触媒粒子表面近くに集中する傾向があり, ニッケルは比較的広範囲に分布してたい積する傾向がみられた。炭素質のたい積は触媒層出口部分に多く, 短時間のうちに最大値に達したたい積量はその後通油時間とともに減少すること, 使用後触媒の比表面積や細孔容積は新触媒の半分以下に減少し, 細孔分布は細孔径の小さいほうへ移行することもわかった。また, これらたい積物の分布状態や物理的性状の変化には触媒の種類や反応条件による差がみられ, とりわけ触媒の細孔径の大きさに大きく影響されることが判明した。
  • 小口 勝也, 若林 孟茂, 中山 哲男, 中村 悦郎
    1981 年 24 巻 4 号 p. 260-264
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    わが国の石油産業に関係があると考えられる原油8種の常圧および減圧残油の一般性状を明らかにし, オイルサンド重質油3種と共に構造解析も行った。一般的な中東原油に比べて, ミナス, 大慶および勝利は重質であり, SおよびVは少なく, 勝利はNが多い。またV/Niが中東系の3~4に対し, 3者は0.1以下であった。ミナスおよび大慶は飽和分が多く, 芳香族分が少ない。
    芳香族性指数は常圧残油に比べ減圧残油の方が大きいが, オイルサンド重質油は傾向を異にした。芳香環数および縮合度とコンラドソン炭素分との間に相関性が認められ, 芳香環とその縮合度がコーキング因子として寄与することが考えられた。
  • エチレンからの酢酸ビニル合成反応におけるアルミナ担持パラジウム触媒の安定性
    中村 征四郎, 渕上 吉男, 鞍馬 一美, 安井 昭夫
    1981 年 24 巻 4 号 p. 265-269
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    エチレンからの酢酸ビニル合成反応におけるアルミナ担持パラジウム触媒の安定性について, 耐酸性の見地から検討した。その結果, 活性の劣化は, 反応中, アルミナ担体上に生成する酢酸アルミニウムが, 触媒の骨格構造を変化させることによりおこることが明らかとなった。酢酸アルミニウムの生成を抑制するために, アルミナ担体を高温で焼成した結果, 1,300°Cで焼成したアルミナ担体上には酢酸アルミニウムは全く生成せず (全フィードガスに対する酢酸分圧8vol%, 135°Cの処理), この担体を用いて調製した触媒では20日以上活性の劣化は認められなかった。これにより, 本触媒の工業的利用の可能性が示唆された。
  • 大勝 靖一, 佐藤 栄一, 長 哲郎
    1981 年 24 巻 4 号 p. 270-273
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    有機金属錯体の酸素分子に対する挙動に関しては, 酸素錯体が中間体として得られるような錯体についての研究が多く, 酸素で即座に分解するような錯体については研究対象タトであった。著者らは過去の研究の延長として, この種の錯体, ビス (アクロレイン) ニッケル錯体の酸化反応を行い, 錯体の酸素および熱に対する挙動を考察した。
    ビス (アクロレイン) ニッケル錯体は, 溶液形において酸素と速やかに反応し, その元の色の赤色が緑色になった。これは酸素酸化によってNi(0)がNi(II)になったことを意味する。このとき対応して本質的に等モル量のアセチレンと一酸化炭素が定量的に生成し, アクロレインの酸化によるアクリル酸の生成は認められなかった。
    また (アクロレイン)2Ni(PPh3)2錯体は, 上述のアセチレンと一酸化炭素の他に75モル%の収率でトリフェニルホスフィンオキシドを生成することもわかった。
    ビス (アクロレイン) ニッケル錯体の酸化反応に関する動力学的考察 (Figs. 1, 2) によると, その酸素吸収速度は錯体と酸素のそれぞれ1次に比例した。酸化反応の速度定数および活性化エネルギーを Table 2に示す。酸化のされやすさは錯体の配位分子に関してビピリジル>トリフェニルホスフィン>エチレンジアミンの順に低下した。
    以上の諸結果に基づいて, 酸素錯体の中間体を含む酸化反応機構を提案した。
    ビス (アクロレイン) ニッケル錯体は熱的に不安定であり, Table 3に示すような温度で溶融分解した。熱的分解反応による生成物は錯体の種類によらずエチレンおよび一酸化炭素であり, 酸化反応による生成物と異なることがわかった。
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