新しい金属資源として注目されているマンガン団塊は, 種々の金属を含有し, 多孔質であることから, 触媒6)~7), および, 吸着剤8)~9)としての用途が期待される。本報では, 工場廃水などに含有される汚染物質の一つである有害重金属イオンの吸着剤としての利用を目的として, 酸性水溶液内における吸着特性を調べ, さらに, 他の吸着剤との比較検討を行った。
マンガン団塊は溶液の初期pH=3.0以下でその構成成分である金属を多量に溶出するため, 吸着は初期pH=3.0以上で行う必要がある (
Fig. 1)。粒度の影響を検討したところ, 150メッシュ以上では, 吸着速度は拡散が律速となった (
Table 2)。吸着平衡に達するのに約18時間を要したが, 初期の吸着はすみやかであり, 吸着開始後, 1時間で平衡吸着量の約83%が吸着される (
Fig. 2)。吸着は部分的に不可逆であり, 吸着された重金属イオンの完全な回収は難しい (
Fig. 3)。水溶液中にアニオン種として存在するCr(VI)は吸着されなかった。Cr(III) は吸着されるものの, 溶液内残留イオンのCr(VI) への酸化と, 団塊を構成するマンガンの多量の溶出が観測された。これは団塊表面に存在する過剰酸素7)によってCr(III)が酸化され, それに伴って団塊の構造破壊が起こったことを示唆した。他方, 溶液内にカチオン種として存在するPb(II), Cd(II), Zn(II)と, HgCl
2の形態を取っているHg(II)は良く吸着され, ラングミュア等温式に従った (
Fig. 4)。これらの飽和吸着量 (
Table 3) は, 他の吸着剤との比較 (
Table 5) および他の研究者ら1),3),4)の結果に対してそん色なく, マンガン団塊の重金属イオンの吸着剤としての有用性を示している。処理温度の異なる団塊についてCd(II)の飽和吸着量は比表面積に依存しなかった (
Fig. 5, Table 4) ことから, 吸着量は主に団塊表面に存在する過剰酸素量と相関関係を有することが推定された。処理温度の変化に伴う両者の変化は一致しており(
Fig. 5), 明らかに重金属イオンが主に過剰酸素上に吸着することを示し, 団塊の吸着能は過剰酸素の定量によって予測しうることを示した。
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