石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
塩化亜鉛を含む溶融塩存在下での石炭抽出物の水素化分解
野村 正勝西村 真琴吉川 彰一
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1982 年 25 巻 6 号 p. 364-370

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抄録

太平洋炭, Big Ben 炭, Indian Ridge 炭からえた各石炭抽出物 (Tables 1, 2) を等重量のZnCl2, ZnCl2-CuCl(3:2mol) およびZnCl2-KCl(3:2mol) 各溶融塩系の共存下で水素化分解を行った。
反応温度350°C, 水素初期圧100kg/cm2, 反応時間3hrでの太平洋炭抽出物の反応結果から抽出物と触媒を機械的に混合した場合, ヘキサン可溶部の収率が低下した (Table 3-A) ので以後触媒はベンゼン-メタノール溶液から抽出物に浸漬担持した (Table 3-B)。 ZnCl2-CuClではガスとBIの収率が高く, ZnCl2-KCl系はガスとBIの生成を抑え最も高いヘキサン可溶部収率を与えた (67.9%)。抽出物の水素化分解におよぼすZnCl2-KCl系塩の組成変化の影響 (Fig. 1) を調べるとKClのmol%が20~40のとき最も高いヘキサン可溶部収率が達成されることがわかった。
ヘキサン可溶部の元素分析値, 分子量および構造パラメーター (Table 4) から酸素%, 分子量およびfaはZnCl2-KCl(4:6>5:5>6:4>7:3>8:2)>ZnCl2>ZnCl2-CuClの順で減少し, H/Cはこの順で増加することがわかる。Table 5はヘキサン可溶部のオイル, レジンAおよびレジンBの分布を示し, ZnCl2-KCl系のKCl含量が減少するとレジンA量が減少し, Table 6は酸素%が減少することを示す。IRスペクトルの結果 (Fig. 2) はこのことを一層明確に示している。
Big Ben 炭および Indian Ridge 炭の抽出物を同様に水素化分解したところ (Table 7), ZnCl2-KCl (6:4, 7:3mol) はZnCl2に比べいずれも高いヘキサン可溶部収率を与え, ガスとBIの生成を抑えることがわかった。Big Ben 炭抽出物で最も高いヘキサン可溶部収率 (70.6%, 70.4%) が達成されたのは出発の抽出物のHaru/Carが低く, 芳香族部の縮合度が小さいことまたもともとヘキサン可溶部の含量が高いことと関連して説明できよう。

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