石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
潤滑油添加剤の固体表面への吸着 (第2報)
金属表面における吸着挙動のエリプソメトリー法による検討
田村 邦光James T. TSEArthur W. ADAMSON
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 26 巻 4 号 p. 309-317

詳細
抄録

潤滑油添加剤の作用は金属表面への吸着現象に基づくことが多い。従来, 潤滑油添加剤の吸着研究は粉体を用いて行われることが多いが, 現実の系では金属面が対象となる。そこで本研究ではエリプソメトリー法を適用し金属平面への添加剤の吸着挙動を検討した。特に, これまで添加剤の吸着膜厚さについての研究例は少ないのでこれを中心に検討を行った。
その結果, 以下の事柄がわかった。エリプソメトリー法はだ円偏光を反射表面にあて, 吸着膜による光の位相変化をとらえて膜厚さを測定する方法であるが, 吸着膜厚さdは位相変化δΔと関連付けられ, 膜厚さが小さい範囲ではFig. 5のようにdはδΔに比例する。この直線のこう配は金属表面の屈折率により異なる。Table 4にエリプソメトリー金属表面の屈折率を示した。
金/n-ヘキサン界面におけるBaDNNSの吸着はFig. 6からわかるように速やかに行われ, 短時間で平衡に達する。これはヘキサンが低粘度でありBaDNNSの拡散が速やかに行われるためと思われる。また吸着は表面の清浄度に極めて敏感に影響をうけ, Figs. 6および7の曲線(2)にみられるように若干でも汚損されると添加剤の吸着量は減る。
Fig. 8はBaDNNSの金/n-ヘキサン界面における吸着の濃度依存性を示すが, 低濃度から立ち上がり一定値に達する。これは Brunauer のTYPE Iの等温線に相当する。このラングミュアプロットはFig. 9のように直線を示すことから, BaDNNSは金表面に単分子吸着をしているものと考えられる。
Table 5は各種金属 (金, クローム, 銅, ステンレス, 鋳鉄) に対するBaDNNSの吸着膜厚さを示すが, 金属間で大差はなく8~11Åと推定された。
Table 6はその他の潤滑油添加剤についての吸着膜厚さを示す。CaDNNSはBaDNNSと同程度の膜厚さを示し, 1分子当たりの占有面積はいずれも140~150Å2と推定された。またZnDiDPについてはDNNS塩より少ない膜厚さを示した。
他方, 粘度指数向上剤については16~25Åと分子量のわりには小さい膜厚さを与えたが, これは表面で吸着分子が水平配向をとっていることによるものと考えられる。
また, 金表面で吸着が行われていることはFig. 10に示すようにオージェ電子分光法により確認された。

著者関連情報
© 公益社団法人石油学会
前の記事 次の記事
feedback
Top