石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
流動層反応装置による可燃物の熱分解ガス化
国井 大蔵
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1984 年 27 巻 6 号 p. 480-488

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抄録

1950年代の初頭において, 流動層反応装置を用いるコークス粉粒のガス化を行ったが, 粒子全表面積を基準とする総括反応速度係数実測値はグラファイトにくらべて1~2桁小さく, しかもその程度は粒径が小なる程, 見かけ流速が小なる程はなはだしいことがわかった。著者はこれを粒子濃厚相と気泡相間の物質移動抵抗が原因であるとして理論式を提出した。
1963年に Davidson が上記の物質移動速度を与える理論式を発表したので, 著者らは前の考え方にこの理論式を応用し, 流動層反応装置においてガス側の反応率を予知するための気泡流動層モデルを提出した。この理論式は KL Model として多くの触媒反応および固体が反応にあずかる反応プロセスの開発•設計に実用されている。
1974年に国井•功力はコークスを熱媒体とする流動層循環系を用い, 重質油を熱分解してオレフィンを製造する方法の研究を開始した。(KKプロセス) この際に行ったコークス粒径制御のための理論的研究の一例を紹介し, つづいて本プロセスが1967年に通産省工業技術院大型プロジェクトとして採用された経緯を述べている。
5t/dayの重質油を熱分解するテストプラントにおいて, コークス微粉が予想外に発生して種コークスの供給を余儀なくされたが, これは再生塔内流動層に送入される空気気泡中に分散したコークス粒の着火現象のためであるという事実を突きとめ, 燃焼方法の改善を提案することによって上記問題を解決した経験を述べている。
KKプロセスに使用された粗粒循環系は固形廃棄物の無公害処理を目的とするガス化プロセス (Pyrox Process) に応用されたが, その開発の経緯と実用化の現状が述べられている。
上記の2プロセスに応用された粗粒循環系は, ハンドリング上重質油と固形廃棄物の中間にあると思われる石炭に対しても効果的に使えるはずである。沖合人工島において輸入石炭を大量に処理して, きれいな液体•気体燃料に転化する事を目的とし, 大容量の石炭乾留ガス化反応装置へ応用することが提案されている。
二つの流動層間に粉粒体を循環する方式は大処理量の各プロセスには向いているが, 例えば局地的に小量発生するバイオマス, プラスチック廃棄物などをその場所でエネルギー化する場合にはコスト高となる。そこで機能的には同じでありながら単一塔内で循環するプロセスが提案され, バイオマスのガス化実験の行われている事が紹介されている。
以上の経験によれば, 流動層における気体側•固体側の反応率は理論的に予知出来る程度に進んでいるが, 粉粒体の循環に関しては理論的研究はわずかであり, まだまだ研究が必要である。

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