石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
二酸化炭素, ペンタンおよびヘプタンを含む系の343Kにおける高圧気液平衡
長浜 邦雄加藤 完司大場 茂夫平田 光穂
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1984 年 27 巻 6 号 p. 506-511

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抄録

石油の3次回収における二酸化炭素攻法の開発には, 二酸化炭素と沸点の比較的高い炭化水素との高圧気液平衡が重要である。本研究では, 沸点差の大きな系について, その臨界点付近までの精度の高い気液平衡データを得るために, 新しいサンプリング機構を持った可視式静置型気液平衡測定装置を開発した。この装置は, Fig. 1に示す様に四つの部分より構成されている。
(1) 厚さ40mmのガラス窓つきのセル本体 (SUS-316製), およびサンプリング部, 設計圧力45MPa
(2) 試料仕込用ポンプ
(3) 圧力測定系
(4) サンプル分析系
新しいサンプリング部は, Fig. 2に示す様に, Bae, 長浜, 平田1)によるサンプル機構を改善し, 特に気相サンプル中への液相同伴を低減する様に考えられている5)。
ここでは, まず2成分系として, 二酸化炭素-ペンタン, および二酸化炭素-ヘプタンを選び, 343K一定の条件下で, 前者については, 0.95~9.13MPa, 後者では, 2.37~10.76MPaの圧力範囲で測定した。温度は, セル本体を空気循環式恒温槽内に設置することで, 0.1K以内に制御され, 補正済み白金抵抗測温体を用い, 0.05K以内の誤差で測定した。圧力は, 検定済み死荷重式圧力計を用い, 5kPa以内の誤差で測定された。組成分析は, ガスクロマトグラフを用い, 検量線には純物質を既知量注入して作成された絶対検量線を用いた。その際のガスクロマトグラフの条件をTable 1に示した。
Table 2およびFig. 3には, 二酸化炭素-ペンタン系の測定結果を示した。Besserer, Robinson2)は, 同系の344.2Kでの実験データを発表しているが, 相互に良好な一致を示し, モル分率で±0.005以内の差であった。この結果より, 本装置が熱力学的に健全であることが示された。同様に, 二酸化炭素-ヘプタン系の実験結果をTable 2およびFig. 4に示した。
さらに, 343Kでのこれら二つの2成分系構成成分をすべて含む3成分系, すなわち二酸化炭素-ペンタン-ヘプタンについて, 圧力7.85MPa, 9.09MPaおよび10.15MPaにおける気液平衡を測定した。その結果をTable 3およびFig. 5に示した。
一方, これらの実験データを相関するため, Peng-Robinson 状態式6)を用いて計算を行った。ここでは, 2成分相互作用パラメーター(Kij) として以前著者ら4)が提案した, 二酸化炭素とC1からC10までのn-アルカンにより構成される2成分系データに対して一般化された式を用いた。本条件下では, そのKijは二酸化炭素-ペンタンに対して0.1257, 二酸化炭素-ヘプタンに対し0.1120であった。相関結果をFigs. 3, 4および5の点線で示した。2成分系では, 臨界点近傍を除いて実験値と相関値は実験誤差以内で一致している。一方, 3成分系実験値の相関は, ペンタン-ヘプタン2成分系の相互作用パラメーターをゼロとしたが, 実験値と計算値の一致は, 臨界点近傍を除いて比較的良好であった。
これらの相関結果より, 二酸化炭素とn-アルカンの2成分系について一般化された相互作用パラメーターを用いて, 二酸化炭素とn-アルカンにより構成される多成分系高圧気液平衡を推算する手法の妥当性が検証されたといえる。
結論として, 本研究において以下の3点が明らかになった。
(1) 沸点の大きく異なる系の高圧気液平衡の測定に対し, 新たに開発した装置を用い, 精度の高いデータが得られた。
(2) 今まで, ほとんど報告されていない, 二酸化炭素-ペンタン, 二酸化炭素-ヘプタンの2成分系および, 現在まで報告値のない二酸化炭素-ペンタン-ヘプタン3成分系の343Kでの気液平衡データを得た。
(3) 一般化された2成分相互作用パラメーターを用い, 二酸化炭素とn-アルカンによる多成分系高圧気液平衡を推算する手法の検証を行い, その妥当性が示された。

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