石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
触媒存在下における石炭の脱水素反応
液化触媒の評価
横野 哲朗伊山 彰一真田 雄三山口 力飯塚 時男
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1984 年 27 巻 6 号 p. 512-518

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抄録

本研究では石炭液化触媒の簡便かつ迅速な評価法を確立するために石炭-金属酸化物触媒系で常圧下における脱水素反応を行い, ガスクロマトグラフィーにより脱水素量を定量し, 触媒の脱水素能を検討した。その結果と高温, 高圧下でのオートクレープ実験により求めた触媒の液化能を比較した。
種々の鉄系酸化物触媒存在下での赤平炭からの脱水素の結果をFig. 1に示す。鉄系触媒の中では, Fe2O3-SO42-が高い脱水素能を示すことが明らかとなった。しかし, メタン, 一酸化炭素の発生に関しては触媒の効果は顕著ではない。(Fig. 2)
高温高圧下の液化実験でもFe2O3-SO42-が高い液化収率を示し, Table 1に示したように, 500°Cまでの総脱水素量が多いことと良い対応を示した。また, 総脱水素量と液化生成物の組成分布の間にはFig. 3に示すような関係が認められた。また, 種々の触媒の常圧下での赤平炭からの脱水素量と液化収率 (100-BI%) の間にはFig. 4に示すような良好な直線関係が成立した。
脱水素反応を種々の多環芳香族化合物のモデル物質を用いて行った。(Fig. 5) Fig. 6に示した通り, モデル物質についても, 触媒を添加することにより脱水素反応が加速されることが明らかとなった。その結果を速度論的に解析して速度定数 (k)および活性化エネルギー (ΔE) を求めた。(Table 2)
種々の酸化物触媒存在下で Big Brown Lignite の水素化分解反応を400°C, 450°Cの温度で行い, その液化収率を Tables 3, 4に示した。その結果をFig. 7のように縦軸にガスおよび生成水の収率, 横軸に100-BI(%) より算出した転化率をとりプロットし, 原点と各点を結ぶ直線の傾き (tan φ) で整理すると触媒活性の評価が容易に行えることがわかった。その関係を用いると, Big Brown Lignite の液化反応では, MoO3-CoO/Al2O3とMoO3/TiO2は水素化分解に対して高い選択性を示し, また, Fe2O3/MoO3-SnO2, Fe2O3-SO42-はクラッキング能が高いことが判明した。(Fig. 8)

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