石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
超臨界水中でのBPAタールの加水分解によるフェノールの回収
阿尻 雅文柴田 隆次新井 邦夫
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1997 年 40 巻 4 号 p. 291-297

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抄録
ビスフェノールA (以下, BPA) タールを超臨界水中で加水分解し, フェノールを回収するプロセスの可能性を検討した。まず, BPAの超臨界水中での分解実験を673K, 20~38MPaで行った。超臨界水中ではBPAは加水分解し, 2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロパノール(HPP)とフェノールを生成する。HPPは, さらに加水分解してフェノールを生成するか, あるいは脱水して安定な4-イソプロピルフェノール(IPP)を生成する。超臨界水中で水密度を増大させるにしたがい, HPPの加水分解が支配的に生じ, その結果, 高いフェノール収率が得られた。これは, 水密度の増大とともに誘電率が増大すると, 反応物質と比較して極性の高い反応中間体がより安定化され, それにより加水分解反応が促進されるためと考える。
実際のBPAタールの超臨界水処理についても実験を行い, フェノール回収の可能性を検討した。アルゴン中で熱分解すると重合物が生成したが, 超臨界水中では見られなかった。超臨界水中では, 圧力を増大させ水の密度を高くするほど, 高速でしかも高いフェノール収率が得られた。最大フェノール収率は原料タールの40wt%以上であり, これはタールのフェノール骨格のおよそ60wt%程度に相当する。超臨界水処理によるBPAタールからのフェノールの回収プロセスの経済性が現れると推定される30wt%以上の高濃度BPAタール処理においても, 同様に高いフェノール収率と重合物の生成抑制が確認できた。
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