石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
レーザー光誘起シクロヘキサン液相部分酸化反応の温度効果と酸素圧力効果
呉 暁聞大島 義人幸田 清一郎
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1999 年 42 巻 2 号 p. 114-119

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抄録

化学反応制御のためのレーザーの応用に関する研究として, エキシマーレーザー光によって誘起されるシクロヘキサンの液相酸素酸化反応をモデルとした実験を行った。これまでに筆者らは, 酸素分子の光吸収過程への関与や反応の生成物分布などについて報告し, 反応機構に関する定性的な考察を行っている。本報では, 酸素の圧力および反応温度をより広い範囲で変え, 量子収率や生成物選択性などへの条件依存性を実験的に明らかにすることによって, 反応機構に関するより詳細な議論を行うと同時に, 有機合成反応へのレーザー光の応用の可能性について検討することを目的とした。実験の結果, 酸素の圧力の上昇に伴って, シクロヘキサンの反応量は若干増加するが, 量子収率は低酸素圧領域で減少し, 最終的に一定の値をとることがわかった。生成物の中では, 主にシクロヘキサノンの生成に酸素圧依存性があることが明らかになった。温度を変化させた実験では, 高温側で量子収率が1に近づき, シクロヘキサノールの生成量が増加する結果が得られた。また, 量子収率の温度依存性から, この反応には16±4kJ/mol程度の活性化エネルギーがあることがわかった。これらの結果をもとに, 反応機構を推定し, 溶存酸素が光開始過程や反応に及ぼす影響, ラジカル濃度と生成物分布の関係などについて考察を加えた。

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