石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
FTIR分光法による飽和炭化水素, 不飽和炭化水素および芳香族炭化水素中の溶存水の状態分析およびその熱安定性について
高岡 京小林 光一高橋 政志曽禰 元隆
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 42 巻 2 号 p. 93-100

詳細
抄録

n-デカン (DAN), n-テトラデカン (TD), 流動パラフィン (LP), 1-デセン (DEN), スクワレン (SQ), 2,6-ジメチル-2,4,6-オクタトリエン (TEN), ベンゼン (BEN), トルエン (TOL) およびo-キシレン (XYL) 中の溶存水が形成する各クラスターをIRスペクトル法で検討した。また, これらを20~200°Cに加熱したときの各クラスターの変化を加熱IRスペクトル法で追跡した。
1) 飽和炭化水素 (DAN, TD, LP) 中の溶存水は, 主として Monomer, Dimer および Trimer として存在する。また, 少量の液体水がフリーボリュームに取り込まれており, 炭化水素の分子が大きいほど多くなる。加熱により, 小クラスターが40°C付近より脱離するが, 液体水は180°Cでも7~15%残留した。
2) 不飽和炭化水素 (DEN, SQ, TEN) 中の溶存水には, Monomer, Dimer, Trimer とともに, 二重結合のπ電子との相互作用で Tetramer, Multimer も生成している。これらは, 二重結合の状態 (位置および共役) で変化する。π電子と相互作用をしているクラスターは良い熱安定性を示した。
3) 芳香族炭化水素 (BEN, TOL, XYL) 中の溶存水は, 芳香環に配向した水分子に1~7分子が水素結合したクラスターを形成する。メチル基の電子供与性による効果でクラスターが大型化した。

著者関連情報
© 公益社団法人石油学会
前の記事 次の記事
feedback
Top