石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
無水フタル酸製造用流動層触媒の開発と実用化 (第2報)
シリカ担持V2O5-K2O-SO3触媒の活性劣化と改良
浅見 幸雄岩崎 守青野 利直廣岡 昇信澤 達也
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2001 年 44 巻 4 号 p. 206-216

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抄録

流動層ナフタレン酸化触媒として微小粒径シリカゾルをシリカ源とする耐摩耗性シリカ担持V2O5-K2SO4-SO3系共融組成触媒の製造法を検討し, 優れた流動触媒物性と無水フタル酸収率を与える触媒を開発した。本触媒を実装置に適用した結果, 初期には320°Cの低温で従来触媒を大幅に上回る無水フタル酸収率の向上 (約4%) を達成した。しかし, この低温条件下で使用中, 経時的に触媒活性の低下と流動不良現象が発生した。本研究では本融液組成触媒の触媒劣化原因を触媒組成の変化の面よりSEM-EPMA分析技術を用いて究明した。この流動不良現象は低温反応および原料ナフタレン負荷による触媒活性成分 (V2O5/K2O/SO3) の粒子外表面への移動および触媒中活性成分組成比の変化に起因し, それにより粒子表面に析出した高融点活性成分 (K2O/V2O5モル比2以下) により促進されることが判明した。酸化排ガス中SO2濃度 (触媒からのSO3揮散に相当する) は, ナフタレン酸化活性の低下および流動不良の発生に重要な役割を果たしていることが確認された。Cs2SO4添加により低融点化した共融混合物からなる新改良触媒を用いた実装置での評価テストにおいて, 安定操業と収率向上が確認された。触媒中のV5+濃度と実装置での無水フタル酸収率との間に良好な相関性が得られた。

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