抄録
アラビア原油減圧残油およびインドネシア天然アスファルトから得たアスファルテン留分の熱分解挙動について検討を行った。まず, 両アスファルテン試料の1H-および13C-NMRスペクトル測定を行い, それぞれの試料の構造情報を得た。主な差異は, ナフテン炭素含量と芳香族ユニットサイズにあり, インドネシア天然アスファルト由来の試料はアラビア原油由来の試料と比較して, ナフテン炭素含量が多く, 芳香ユニットサイズが小さいことが明らかとなった。次に, それぞれの試料の熱分解特性について検討を行う目的で, 両試料をパイレックス封管中, アントラセン等の多環芳香族溶剤存在下あるいは非存在下, 420°Cで5分間熱処理した。溶剤の添加の有無にかかわらず, 生成物の分子量分布が低分子側にシフトしていることが観測されたが, そのシフト量は, 9,10-ジヒドロアントラセンのような部分水素化芳香族化合物存在下での反応では比較的小さく, アントラセン, アクリジンのような多環芳香族化合物で大きいことが明らかとなった。このような多環芳香族化合物の添加効果は, 添加した芳香族化合物のラジカル受容能を考慮すると理解できる。