Journal of the Japan Petroleum Institute
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常圧残さ油の安定性から見た加熱炉管へのコーク付着傾向
鈴木 治山野 紳二郎小西 裕和海野 洋猪俣 誠
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2002 年 45 巻 4 号 p. 207-213

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抄録
Vacuum distillation unit (VDU) など, 残さ油の処理装置における加熱炉のコーキングでは, 油の安定性がその促進要因の一つであると考えられている。油安定性からコーク付着を予測する手法を確立するための第1段階の研究として, この論文では, 小型実験装置を用いた実験によって, 中東系常圧残さ油のアスファルテン凝集と加熱炉管のコーク付着傾向との関連を調べた。実験ではVDUの深絞りの領域となる450°C程度までの流体出口温度が達成されるように試験片を加熱して原料油を供給し, コーク付着速度と原料油ならびに通油後の油の性状を測定した。コーク付着に関しては, SUS304ステンレス鋼と, 比較のために加熱炉管材質として採用されているクロムモリブデン鋼 (5Cr-1/2Moあるいは9Cr-1Mo) も検討した。コーク付着速度は材質によらず試験片の加熱温度とともに指数関数的に増加した。材質間の付着速度はクロムモリブデン鋼よりもステンレス鋼の方が幾分抑制される結果となった。アスファルテンの凝集性の評価は, Heithaus 法に準じ, P値を測定することによって行った。P値はその値が小さいほど油が不安定であり, アスファルテンが凝集してコーク前駆体を形成しやすいことを示す。この油の安定性の評価では, 通油後の油のP値が流体出口温度とともに逆に大きくなることが示された。通油後の油におけるP値の増加は, コーク付着によって流体から不安定なコーク前駆体が除去され, 油が安定化したために生じた変化と考えられる。以上の結果は, 原料油と通油後の油のP値およびコーク付着傾向の評価が加熱炉管のコーク付着の指標として利用できる可能性を示している。
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