環境社会学研究
Online ISSN : 2434-0618
特集 環境社会学のパースペクティブ
環境問題への社会学的視座―「社会的ジレンマ論」と「社会制御システム論」―
舩橋 晴俊
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1995 年 1 巻 p. 5-20

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抄録

今日、多数の主体が関与し巻き込まれているようなタイプの環境問題が頻発している。そのようなタイプの環境問題の発生メカニズムの分析には、「集合財としての環境をめぐる合理性の背理」と社会の自己破壊性に注目する社会的ジレンマ論が有効性を持つ。原型としての共有地のジレンマから出発して、自己回帰型、格差自損型、加害型ジレンマという分類軸、市場メカニズムによる加速、環境高負荷随伴型の構造化された選択肢への通常の主体の巻き込みという視点の追加によって、社会的ジレンマの7類型を提示できる。社会的ジレンマ論は解決論についても、公共性論や経済的手段について、いくつかのオリジナルな論拠を提供する。行政組織と社会運動の相互作用としての社会制御システムを通して、社会的規範を形成することが社会的ジレンマ克服の鍵である。社会制御システムによる問題解決過程の把握にあたっては、経営システムと支配システムの両義性、環境制御システムと経済制御システムとの交錯の深まりという視点が重要である。

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© 1995 環境社会学会
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