環境社会学研究
Online ISSN : 2434-0618
論文
責任実践としての近隣騒音問題――「被害を訴えることの意味」の規範理論的考察――
大門 信也
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 14 巻 p. 155-169

詳細
抄録

本稿の目的は責任実践の観点から,近隣騒音の被害を訴えることの意味について考察し,この問題への適切な制度的対処のあり方を探ることにある。この目的のために「騒音被害者の会」に関する文献資料および聞き取り調査のデータを分析したところ,1970年以降,この会が個々の会員の解決へ取り組みを支援してきたことがわかった。とりわけ騒音被害者の会は,会員たちが粘り強く相手に責任を問い,応答を求め続けることを促してきた。こうした活動は,〈問責-答責関係〉を構築する努力として理解できる。このような実践において「責任」は,何か負担すべき実体や誰かへの配慮としてのみならず,責任を問いそれに答える人々の関係および過程としての特徴を色濃く有していると理解できる。このような考察にもとづき筆者は,近隣騒音問題に対処するためには,〈問責-答責関係〉を維持するという観点のもとに行政制度を再吟味する必要があると提言する。また〈問責-答責関係〉の視座が,環境社会学にとって重要な規範理論的枠組みであることを指摘する。

著者関連情報
© 2008 環境社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top