環境社会学研究
Online ISSN : 2434-0618
論文
不知火海沿岸地域住民の健康度を規定する社会的要因の探索――水俣病補償者割合という地域特性に着目して――
牛島 佳代成 元哲丸山 定巳
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 18 巻 p. 141-154

詳細
抄録

本稿の目的は,住民の健康を地域特性との関連で解明することにある。水俣病を経験した不知火海沿岸地域において地域特性として着目したのは水俣病補償者割合である。水俣病補償者割合とは大字単位での水俣病認定患者数と医療手帳受給者数の合計を,その大字の総人口で除したものである。水俣病補償者割合が低い大字において,水俣病の補償を受給する住民はスティグマを貼られ,孤立しやすく,その結果,心身の健康が低下する可能性がある。他方,水俣病補償者割合が高い大字で,補償を受給する住民は周囲から承認を得て,医療サービスや経済的なメリットもあって,健康度が向上する傾向がある。住民の健康は,水俣病補償者割合が高い地域/低い地域という脈絡によって左右され,またそれぞれの地域においてよりストレスがかかる住民集団も変化する。こうした知見から,不知火海沿岸地域において水俣病補償者割合という地域特性は,住民の健康度と関連する主要な社会的要因の1つであることが明らかになった。

著者関連情報
© 2012 環境社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top