本稿は,沖縄県国頭村宜名真集落の漁民の生活戦略の分析を通して,彼らが複合的な実践を行うことによって自然資源利用を継続させていることを明らかにするものである。
宜名真集落では古くから浮魚礁漁が行われてきた。それは今日,外部社会との相互作用によって文化資源として価値づけられ,集落を象徴する資源となっている。そしてたんに象徴的な資源というだけでなく,漁民の生活を支える資源としても機能している。浮魚礁漁がこのような機能をもつようになった背景には,自然資源利用における宜名真漁師の複合的な実践の存在がある。
そこで本稿では,こうした漁民の生活戦略を分析する中で,たとえば,隣接地域の漁師との関係性の構築,販路拡大のための取り組み,主要な漁業種を補完する漁業種の創出,といった生業活動におけるさまざまな実践の様態を明らかにし,そこから複合的な実践が生み出す資源保全の可能性を検討した。