沖縄では沖縄戦,米軍占領期,そして日本「復帰」後から現在に至るまで,戦時と平時をわかたず,軍隊による事件・事故,人権侵害,環境破壊が生じてきた。沖縄に対する強権的な政治と基地の新設,軍隊の機能の変容が進む現在にあって,環境社会学の知見による現状への介入は喫緊のものとして期待されているのではないだろうか。だが,環境社会学はこれまで軍事基地問題に正面から向き合ってきたとはいえない。そこで本稿では,沖縄の基地・軍隊をめぐる諸問題を事例として,環境社会学が軍事基地問題をとらえるために必要な基本的視座を提示することを試みる。
まず,沖縄の軍事環境問題の歴史をふりかえり,軍事的暴力の特徴が空間的・時間的に広がりをもっていることを確認する。そのうえで,軍事基地をめぐる諸問題をとらえるための概念や認識枠組みを批判的に検討した。すなわち,受益という概念や受苦を強いられる人びとへの受益の還流や配分という枠組み自体が軍事化されていることを考察した。そのうえで,環境社会学が軍事環境問題を対象化するためには,脱軍事化をつくりだしていく批判的な知と枠組みが必要であることを示し,その基本的な視座を整理した。