環境社会学研究
Online ISSN : 2434-0618
特集 環境社会学からの軍事問題研究への接近
環境社会学からの軍事問題研究への接近
熊本 博之
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2019 年 25 巻 p. 7-17

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抄録

本特集は,2018年12月9日に開催された第58回環境社会学会大会シンポジウム「環境社会学からの軍事問題研究への接近」をもとに編まれたものである。特集の総説論文にあたる本稿では,それぞれの論文の概要を紹介したうえで,そこから析出された,環境社会学が軍事環境問題に取り組むにあたって留意すべき課題をまとめた。そしてこれらの課題の背景には国家による軍事の独占があること,それゆえに加害の主体である国家についての論及が不可欠であること,しかしそこには「統治の道具」となってしまう危険性が潜んでいることについて指摘した。

そのうえで環境社会学は,「国家の論理」に対抗できるような「環境の論理」を,社会に生きる人びとの視点に立ちながら彫琢していくことで,脱軍事化した社会へと至る道筋を描き出すことができること,それは軍事問題研究への独自の貢献であり,そして環境社会学がもつ可能性を広げるものであることを提起した。

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