環境社会学研究
Online ISSN : 2434-0618
小特集 震災をめぐる暮らしの連続性/断絶と環境社会学のまなざし
震災をめぐる暮らしの連続性/断絶と環境社会学のまなざし
黒田 暁
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2019 年 25 巻 p. 93-108

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抄録

小特集「震災をめぐる暮らしの連続性/断絶と環境社会学のまなざし」では,環境社会学会震災・原発事故問題特別委員会(2011年設立)がこれまで取り組んできた研究例会の内容と,そこから明らかとなった知見に基づいて,3名の論者が議論を展開する。本稿は,これらの議論に先駆け,3本の論考において焦点となる「震災をめぐる暮らしの連続性/断絶と環境社会学のまなざし」を位置づけようとする。環境社会学の視点は,震災ならびに原発事故によって各地の暮らしの現場で断ち切られたこと/ものの存在を明らかにしてきた。またその一方で,震災の構造変動に巻き込まれる前から人びとによって営まれ,維持され,継続が試みられてきたもの/こととは何なのか,について注意深く汲み取ろうとする。こうした複眼的な視点から,小特集では以下の3つの論点を検討することによって,震災後の社会とその現在を読み解こうとする。すなわち①大規模複合震災による「被害」の中身に分け入るとともに,「被害」をどのように可視化,抽出するべきなのかを問う②「被害」が時間とともに表出・変容していくことをどのように捉えるか③今これから,

「復興」と生活再建はどこへ向かうか,を明らかにする。これら3つの論点を通じて,これまでの環境社会学の調査研究や,その視点から得ることができた「被害の可視化」の試みと,その可能性について論じる。環境社会学が,大規模複合災害に対して,研究・実践を通じて独自の切り口を示すことができるのかどうか,3本の論考の道筋をつけようとした。

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