環境社会学研究
Online ISSN : 2434-0618
特集 エネルギ一転換の社会学
バイオエネルギーからみた社会認識の潜勢力――分権化が開くエネルギー転換の可能性――
小池 浩一郎
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2002 年 8 巻 p. 54-72

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抄録

原子力発電に関する世論調査において多数派が選ぶ選択肢の論理をつなぎ合わせると,「原子力は不安ではあるが,日本は資源小国であるから,原子力に依存せざるを得ないので,安全に配慮して運転するべきである」ということになる。資源小国であるということが自明のごとくに論理の前提条件を構成している。しかし,バイオマスをエネルギー資源としてとらえれば,近年温暖化対策の鍵としてバイオエネルギーの普及を推進しているヨーロッパと比較しても,決して大差のないバイオマスのポテンシャルを日本は持っている。資源小国論の刷り込みは,国民世論に原発を是認させるためには効果的だが,バイオエネルギーについては,明らかに誤った認識を国民世論に植えつける役割を果たしている。

このような誤った認識があたかも正しい認識であるかのように国民世論に浸透してしまっている背景には,エネルギーという重要な問題を地域,自治体レベルで住民が自分たちの問題として考えるようにさせない,集権システムがいまだに強い影響力を保っているという社会の側の現実,すなわち,分権化の不徹底という現実がある。ヨーロッパでバイオマス導入をリードした自治体のように,エネルギー問題を住民が自分たちの問題として考え,自分たちの既成概念を自分たちで打ち破ることができるような地域だけが,総合的に循環型社会につながる政策と,それの根拠となる総体的な社会認識を持ちうる。

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© 2002 環境社会学会
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