環境社会学研究
Online ISSN : 2434-0618
8 巻
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巻頭エッセイ
特集 エネルギ一転換の社会学
  • 池田 寛二, 高田 昭彦
    2002 年 8 巻 p. 4
    発行日: 2002/10/31
    公開日: 2019/02/05
    ジャーナル フリー
  • 飯田 哲也
    2002 年 8 巻 p. 5-23
    発行日: 2002/10/31
    公開日: 2019/02/05
    ジャーナル フリー

    1998年に始まった「自然エネルギー促進法」の法制化を目指す市民運動は,2002年5月31日の参議院本会議で政府提案による「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(以下,「新エネ利用特措法」)が成立したことで,一応の区切りを迎えた。

    過去3年間余りに及ぶ「自然エネルギー市民立法」は,超党派の国会議員約250名からなる自然エネルギー議員連盟と連携しつつ,エネルギー政策ではもちろん,環境政策としても,一時は大きな運動に成長した。しばしば「鉄の三角形」と形容される政・官・業からなる「旧い政策コミュニティ」が完全に支配してきた日本のエネルギー政策に対して環境NPOが大きな影響力を持ち得たケースとしては,例外的といってもよいと思われる。

    その「自然エネルギー市民立法」を通して,何が達成され,残された課題は何か。グリーン電力制度の登場なども視野にいれ,ここ数年間にわたる自然エネルギーを巡る市民運動を,自然エネルギー促進運動の中心的な立場にあった当事者の視点から検証を試みた。

  • 田窪 祐子
    2002 年 8 巻 p. 24-37
    発行日: 2002/10/31
    公開日: 2019/02/05
    ジャーナル フリー

    本稿は,社会運動や自治体など政策過程に関わる諸主体の活動の「結果outcome」に注目して,エネルギー政策転換の可能性を左右する要因を検討しようとするものである。日本と,原子力・化石燃料から再生可能エネルギー重視へとシフトした西欧諸国,とくにドイツにおける,エネルギー政策の決定段階および実施段階における諸主体の役割の検討を行う。仮説的な結論として次の2点を提示する。国レベルの抜本的政策転換は,ドイツの脱原子力合意がなされた過程からみても,必ずしも直接的な「市民参加」を要請するものではなくむしろその逆である。逆に実施段階における新たな代替案としての再生可能エネルギーの導入には,アドボカシーのみではなく実践を行っていく運動がカギになる。

  • 田中 充
    2002 年 8 巻 p. 38-53
    発行日: 2002/10/31
    公開日: 2019/02/05
    ジャーナル フリー

    日本のエネルギー政策は,これまで主に中央政府が所管するとされ,地方自治体が明確な理念と施策体系のもとでエネルギー政策を展開してきた例はあまりみられない。しかし今日,地球温暖化に関して京都議定書の温室効果ガス削減目標を義務づける法律が制定されたことを受けて,自治体行政にとって,エネルギー問題への対応は重要な位置を占めつつあり,とくに温暖化対策の強化が求められている。

    そこで本論文は,こうした自治体を取り巻くエネルギー問題の現状と政策課題を検証するとともに,エネルギーに係わる消費者,供給者,政策立案者という3つの視点に着目して,今後の自治体行政の方向性を考察し提案することを目的とする。

    近年では,相当数の自治体が新エネルギービジョンの作成や省エネルギープランの推進なども取り組んでいるが,行政全般からみると部分的な政策分野に限られ,十分な効果をあげているとはいいがたい。一方,地方の市町村では,地域の自然資源である日照,風況,森林等を生かし,風力や太陽光,小水力によるエネルギー供給事業に乗り出す自治体もみられている。本稿では,そうした先進的な事例をいくつか紹介する。

  • 小池 浩一郎
    2002 年 8 巻 p. 54-72
    発行日: 2002/10/31
    公開日: 2019/02/05
    ジャーナル フリー

    原子力発電に関する世論調査において多数派が選ぶ選択肢の論理をつなぎ合わせると,「原子力は不安ではあるが,日本は資源小国であるから,原子力に依存せざるを得ないので,安全に配慮して運転するべきである」ということになる。資源小国であるということが自明のごとくに論理の前提条件を構成している。しかし,バイオマスをエネルギー資源としてとらえれば,近年温暖化対策の鍵としてバイオエネルギーの普及を推進しているヨーロッパと比較しても,決して大差のないバイオマスのポテンシャルを日本は持っている。資源小国論の刷り込みは,国民世論に原発を是認させるためには効果的だが,バイオエネルギーについては,明らかに誤った認識を国民世論に植えつける役割を果たしている。

    このような誤った認識があたかも正しい認識であるかのように国民世論に浸透してしまっている背景には,エネルギーという重要な問題を地域,自治体レベルで住民が自分たちの問題として考えるようにさせない,集権システムがいまだに強い影響力を保っているという社会の側の現実,すなわち,分権化の不徹底という現実がある。ヨーロッパでバイオマス導入をリードした自治体のように,エネルギー問題を住民が自分たちの問題として考え,自分たちの既成概念を自分たちで打ち破ることができるような地域だけが,総合的に循環型社会につながる政策と,それの根拠となる総体的な社会認識を持ちうる。

小特集 エネルギ一転換の現場から
研究動向
論文
  • 本田 宏
    2002 年 8 巻 p. 105-119
    発行日: 2002/10/31
    公開日: 2019/02/05
    ジャーナル フリー

    本稿では,ドイツの原子力政治過程の諸段階を再構成し,運動の挑戦と脱原子力政策とを結ぶ政治過程の軌跡と力学を検討する。主な分析枠組みとなるのは,特定政策領域を長期的な時間枠で包括的に再構成し,そこでの政策転換の契機を捉えるのに有効な,アドヴォカシー連合論である。結論として,ドイツでは1975年のヴィール原発予定地占拠を機に反原発の社会的連合の全国的形成が始まった。その過程で開放的な政治制度の効果が表面化し,また当時の連邦政府与党,社会民主党(SPD)の一部が原子力批判派に加わり,原発発注を凍結に導いた。しかし第二次石油危機後,原子力推進派は巻き返しに転じ,一時的な原発認可再開に成功した。これに対し,脱原子力の連合は対案形成活動,緑の党の結成,さらに緑の党とSPDの連合政治を通じて対抗力を養った。加えて,活発な抗議運動の存在や,原発事故のような促進的事件の頻発により,保守政権下でも原子力推進政策はむしろ緩慢な縮小過程をたどったと言える。

  • 田中 求
    2002 年 8 巻 p. 120-135
    発行日: 2002/10/31
    公開日: 2019/02/05
    ジャーナル フリー

    本稿は,1996年に商業伐採を導入したガトカエ島ビチェ村を対象とし,村人が商業伐採を導入した要因をローカル・コモンズの視点から検討し,さらに商業伐採を経て形成された村人の開発観を明らかにするものである。

    ソロモン諸島では,親族集団による土地所有が法的に認められている。ビチェ村における商業伐採は,慣習的な土地所有代表者を通して伐採契約が結ばれたが,その過程に実際の森林利用者である村人の参加はなされなかった。村人は新たな焼畑用地と収入源の必要性から伐採開始を事後承諾したに過ぎなかったのである。商業伐採の雇用労働には多くの村人が参加した。出来高制の伐採労働は過伐の原因となり,また月曜から金曜日までの終日雇用は,安息日を中心とする生活サイクルを混乱させるものであった。村人はロイヤルティとして1世帯平均4100ソロモン・ドルを得たが,金額の不満と分配の不平等は村人相互に不信感を植え付けた。

    村人は,商業伐採を経て,「森林資源の共同利用制度,サブシステンスによる食糧自給,平等な利益分配による村の人間関係を維持しつつ,行うべきもの」という開発観を形成し,村人主体の製材販売を試行している。

  • 朝井 志歩
    2002 年 8 巻 p. 136-150
    発行日: 2002/10/31
    公開日: 2019/02/05
    ジャーナル フリー

    近年,NPOの社会的役割についての関心が高まっており,それは環境政策においても例外ではない。本稿では,「フロン回収・破壊法」の制定過程を詳細に分析し,その過程においてNPOが果たした役割について考察する。国際的にフロン対策が進み,各国では法律による規制が為されていた最中にあって,日本では回収や破壊というフロン対策は一向に講じられないまま,フロンは大気中に放出され続けていた。その原因の解明から,審議会の抱える問題点や,社会制度においてチェック機能が働かない構造的な要因が浮かび上がってきた。そうしたシステムの欠陥を抱える状況下で,NPOがいかなる活動展開を見せ,いかにしてシステムに切り込んでいったのかの解明が,本稿のねらいである。地球環境問題は身近な事柄として認識されにくいという性質を持つ。世界規模での被害の発生と,将来世代に渡る環境負荷の蓄積という問題に対して,従来とは違った形での「被害」の捉え方が必要である。

  • 霜浦 森平, 山添 史郎, 塚本 利幸, 野田 浩資
    2002 年 8 巻 p. 151-165
    発行日: 2002/10/31
    公開日: 2019/02/05
    ジャーナル フリー

    本稿では,滋賀県守山市を中心として活動している「豊穣の郷赤野井湾流域協議会」を事例として,地域環境ボランティア組織の活動の二元性について検討していく。協議会は,守山市の住民が主体となって水環境保全活動を行なっている組織であり,その活動は2つの方向性をもっていた。協議会は,水量確保対策や清掃活動による水環境の保全を重視する「自立型活動」を行なうとともに,これまでの水環境の管理主体である行政,自治会,農業団体の協力,協議会活動への一般住民の理解を得るための「連携型活動」を行なってきた。協議会では,活動の2つの方向性をめぐって意見対立が起こった。本稿では,まず,この意見対立の経過をたどり,協議会の活動が「自立型活動」と「連携型活動」の二元性を有することを示し,次に,協議会が2つの活動を両立し得た要因について考えたい。

    地域環境の維持・管理を行なう新たな担い手として,地域環境ボランティア組織の役割が期待されている。地域環境ボランティア組織には,自らの活動によって地域環境を保全する「自立」的側面とともに,従来の地域環境の管理の担い手と協力関係を形成する「連携」的側面が求められる。「自立」と「連携」の両立が地域環境ボランティア組織の課題である。

  • 北村 也寸志
    2002 年 8 巻 p. 166-180
    発行日: 2002/10/31
    公開日: 2019/02/05
    ジャーナル フリー

    日本の森林・林業は重い課題を背負っている。市場に出した木材は原価割れを起こし,管理放棄された人工林も目立ってきた。都市近郊の里山は,農業者などと森林との関係が希薄になり,「里山の自然」の維持を求める市民らによる保全運動が広がりつつある。このような中で,かつお節の生産地である枕崎市と山川町が位置する鹿児島県南薩地区の広葉樹林では,今なお採取林業である薪の生産が続いている。

    かつお節は,その製造工程のなかの「焙乾」において,燃料として広葉樹林から切り出された薪が使われる。景気に左右されることの少ない,安定したかつお節の生産には,この薪の安定供給が欠かせない。南薩地区の人々はかつお節加工を通して,海洋生物資源のカツオと森林資源である薪を結びつけて持続的に利用してきた。日本の多くの里山が存亡の危機にさらされているなかで,ここではなぜ,その持続が可能であったのだろうか。

    本稿では,それを明らかにするためにかつお節生産における焙乾の意義を簡潔に整理し,鹿児島県南薩地区における焙乾用薪材の伐採と供給の実態を,薪を切る人々の姿を通して考えてみた。結果として,かつお節製造と里山林利用(薪の伐採)が一体となって営まれている実態を明らかにしえた。また「海」(漁業)と「森」に視点をおくことで,これまで「里」(農業)と「森」との直接のつながりに焦点をおいてきた里山研究では見えにくかった,特産物加工業の介在という利用形態が,燃料革命後も里山の維持に重要な役割を果たしてきたことが明らかになった。

  • 牧野 厚史
    2002 年 8 巻 p. 181-197
    発行日: 2002/10/31
    公開日: 2019/02/05
    ジャーナル フリー

    日本の大規模遺跡保存のモデルとなっている佐賀県吉野ヶ里遺跡の保存現場を事例として,遺跡とその周辺自治体を含む地域空間の公共性を土地利用秩序の共同性という視点から検討した。吉野ヶ里遺跡は,1989年,マスコミが遺跡を邪馬台国時代のものと報道したことから,膨大な数の見学者が訪れるようになった。そのため,佐賀県は遺跡の周囲を地域制(ゾーニング)し,景観復原を行う。それは,遺跡の活用策とみなされた。だが,地元と位置づけられていた基礎自治体(町村)の地域計画とのあいだに齟齬が生じた。このプロセスを検討した結果,複合的な土地利用を排除した一面的な地域制(ゾーニング)が齟齬を生じさせたことがわかった。地域空間の公共性を確保するためには,基礎自治体・住民による,遺跡への多面的なかかわりが保障される必要がある。だが,この点で地域制(ゾーニング)の適用の仕方に問題があったといえる。

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