2020 年 65 巻 3 号 p. 92-97
今から80年ほど前の昭和。国運をかけて総力を挙げ,大混乱の中,甚大・悲惨な犠牲を払った日中戦争,太平洋戦争の時代,日本の科学はどのようであっただろう。当時の「有機合成化学協会誌」を読めば,予想どおり毒ガスや爆薬などの総説があり,人的・物的資源の不足を嘆く座談会がある。いっぽう「科学」を読めば,大学の繰り上げ卒業,勤労動員などによる教育水準の低下,日本の将来を心配する記事が多い。しかし,満州から蘭印に広がる大東亜共栄圏を舞台にした,ユニークな研究テーマも見られた。