1963 年 76 巻 904 号 p. 366-373
東南アジア産のイネ属植物の Oryza minuta J. S. Presl ex C.B. Presl (4倍体, 2n=48) は O. officinalis Wall. ex Watt (2倍体, 2n=24) は, 外部形態において区別できるものか否かについて不めいりょうであった. これは研究材料の不足のために, 今まで十分な比較検討ができなかったためである. 筆者らは1963年にフィリッピンに採集旅行をおこない, この2種のいずれかに属する36系統をあつめた.そのうち15系統は2倍体で, 21系統は4倍体であった. 2倍体と4倍体の外部形態を比較したところ, 小穂の巾と形および花序の特徴にはっきりした差異のあることが明らかになった. 2倍体は O. officinalis の基準標本とよく一致し, 4倍体は O. minuta の記載とよく一致する. 2倍体と4倍体の分布を今回の採集記録および前研究者によって作られた標本にもとづいて検討したところ, 多少のずれのあることが明らかになった. つまり, 4倍体 (O. minuta) はフィリッピンの北東部に限られており, 2倍体 (O. officinalis) はフィリッピンの南西部から東南アジアに広く分布している. 以上の結果から, O. minuta と O. officinalisは別種として取扱われるべきものであると結論された.