1965 年 78 巻 920 号 p. 63-67
Mitten が命名した Calyptothecium hookeri は, 原標本についてみると, 2種を含む混合種のように思われる. 標本のうち, 胞子体をつけたものは Hooker と Thomson の採集品である No. 811/2 のみであり, Mitten は胞子体の記載をも与えているので, 筆者はこの番号のものを C. hookeri のlectotypeに指定したい. そうすると, C. sikkimense や日本にも産する C. cuspidatum はそのシノニムになる. No.797 のみは他と違った taxon のもので, これは C. pinnatum に当る.台湾産の C. formosanum は C. wightii と同種であり, またC. wightii と同種と考えられてきたC. hamatum は原標本を比較してみると, それぞれ別の種と考えられる. 次に, C. japonicum は C.urvilleanum の名でよばれるのがよい.Calyptothecium 属は Pterobryopsis 属によく似ていて, しばしばその区別は困難で, 今まで論議のもとになっている. 筆者は, Calyptothecicm 属は Pterobryopsis 属からは, 葉の基部両隅に耳状のくぼみのあること, 前さく歯のあること, 歯突起の発達のよいこと, 帽に毛のあることなどを考慮して区別されるものと思う. なお, Calyptothecium 属は従来ヒラゴケ科に分類されていたが, むしろ, ヒムロゴケ科に入れるのがよいと思う.