ハッショウマメの上胚軸とその切断面に生ずるカルスとにおけるグルコース代謝経路の比較をおこない,次のような結果が得られた.
1. カルスにおいては, グルコースからのCO
2放出に対するマロン酸阻害は, 上胚軸の各部分にみられるそれに比して低い.
2. 上胚軸においては, 各部分にみられるマロン酸阻害度は, 先端部から基部にむかって, 減少する.
3. カルスにおけるC
6/C
1 ratio は, 上胚軸の各部分におけるそれより, 小さな値を示す.
4. 上胚軸では, 先端部から基部にむかって, すなわち, 分化と aging がすすむにつれて, C
6/C
1 ratioは小さくなる傾向にあるとみなされる. しかし, カルスでは, 若いカルスのほうが, むしろ小さな値を示している.
5. Part Iでは, グルコースのC-6からのCO
2放出は, C-1からのCO
2放出と同様, マロン酸によって強く阻害されるが, カルスではマロン酸阻害はいちじるしくない.
6. Part I とカルスとを比較すると, グルコース-U-C
14からのC
14O
2放出量は, カルスのほうが多いが, クエン酸-1, 5-C
14からのC
14O
2放出量は, 逆に part I のほうが多い.
7. これらの事実は, カルスのグルコースの分解経路については, PP系が主要な経路であり, 上胚軸,ことに part I では, EMP-TCA 系が, 大きな比重をしめていることを示唆する.
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