学校保健研究
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大学女子陸上中・長距離選手における月経異常の実態と競技的要因
菊地 潤中村 泉樫村 修生
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2008 年 50 巻 1 号 p. 49-55

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抄録

 月経異常が多いとされる陸上中・長距離選手を対象に, 月経状態, トレーニング状況に関する調査および体脂肪量測定を行い, 月経異常の実態を把握するとともに, 陸上中・長距離選手における月経異常の競技的要因について検討を行った結果, 以下のことが明らかになった.

1) 陸上中・長距離選手の体脂肪率は5.0%から25.9%に分布し, 平均体脂肪率は14.4%であった.

2) 平均初経年齢は13.1歳で, 一般女性より遅延傾向が認められた.また, 半数以上の選手が初経発来前よりトレーニングを開始していた.月経周期の異常は全体の47.8%に出現し, これも一般女性より明らかに高率を示した.

3) 月経周期が規則的な群と不規則+無月経の群では年齢, 身長, 初経年齢, 月間走行距離, 陸上競技歴の平均値に有意な差は認められなかった.また, トレーニングに対する主観的強度や競技レベルにも, 月経周期との有意な関連はみられなかった.しかし, 体重と体脂肪率では, 規則的群と不規則+無月経群に有意差が認められた.

4) 月経周期の異常出現率は, 体脂肪率が低くなるのにともなって高くなる傾向を示し, 体脂肪率が20%以上あると月経異常を示す選手はいないが, 10.0%以下になるとすべての選手に月経異常が生じていた.また, 月間走行距離と体脂肪率には有意な負の相関関係が認められ, 陸上中・長距離選手における月経異常の発現は, トレーニングとして走る距離が増加し, その結果として体脂肪量が減少することと強く関連していることが示唆された.

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© 2008 一般社団法人 日本学校保健学会
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