2021 年 71 巻 2 号 p. 94-101
平成28年度国民健康・栄養調査によると,過去1年間に歯科検診を受診した者の割合(20歳以上)は52.9%である.健康日本21(第二次)には過去1年間に歯科検診を受診した者の割合を65%以上に増加する目標を掲げているが,いまだ達成されていない.本研究では,平成28〜29年度の2年間に鹿児島県曽於郡大崎町で実施された成人歯科検診を受診した366人(男性183人,女性183人,平均年齢66.4歳,年齢幅27〜96歳)を対象に,かかりつけ歯科医による定期検診受診に関わる因子について探索を行った.かかりつけ歯科医による定期検診受診の有無に対して,自己記入式アンケートおよび歯科医師による検診の結果をもとにデータマイニング手法である決定木分析を用いて因子の組み合わせやパターンを抽出し,それらの効果をχ2検定で評価した.その結果,「この1年間の口腔衛生処置の受療経験」「性別」「歯間清掃用具の使用経験」の3つが受診に関わる重要な要因であることが示された.歯科医療従事者は,少なくとも1年に1回は歯科医院で歯石除去等を受けて,週に3日以上の歯間清掃用具を使用するように指導することにより,定期歯科検診の受診率が向上する可能性が示唆された.また,性別については男性への受診勧奨がより有効と考えられた.