抄録
要旨:症例は34歳男性.右陰嚢内容の無痛性腫瘤を主訴に近医を受診し, 右陰嚢内腫瘍の診断の下, 右高位精巣摘除術を施行された.病理組織学的に横紋筋肉腫で, 多形型と診断された.CTで, 傍大静脈リンパ節転移を認めたため, 追加治療目的で当科を紹介され, 入院した.Intergroup Rhabdomyosarcoma Study(IRS)における治療前TNM分類によるとT2bN1M0, Stage I, また術後グループ分類ではGroup IIBと診断され, VAC療法(vincristine, actinomycin D, cyclophosphamide)を2コース, さらにEP療法(etoposide, cisplatin)を1コース施行したが, その効果を認めず, 後腹膜リンパ節摘除術を施行した.摘除標本から横紋筋肉腫の転移と診断された.追加治療を施行しなかったところ3カ月後に, 回盲部と右尿管, 右外腸骨動脈を巻き込む形で腫瘍の再発を認めた.これも摘除し, 同時に腫瘍床に15Gyの術中照射も加えた.adjuvant療法として, VIE療法(vincristine, ifosphamide, etoposide)を6コース施行した.最終の化学療法終了後42カ月経った現在, 再発の兆候なく, 経過観察中である.