日本泌尿器科学会雑誌
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症例報告
経尿道的手術で長期生存を得た膀胱肉腫の一例
平山 貴博松本 和将大草  洋藤田 哲夫佐藤 威文岩村 正嗣内田 豊昭馬場 志郎
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2009 年 100 巻 5 号 p. 576-579

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抄録
(緒言)膀胱肉腫は稀な疾患であり, 一般に予後不良とされる.そのため, 現時点で有効な治療法の確立には至っていない.今回, 経尿道的手術により20年間の無再発生存を得た膀胱肉腫の一例を経験したので報告する.
(症例)症例は35歳男性で, 主訴は肉眼的血尿であった.1988年7月, 膀胱タンポナーデのため当科緊急入院となった.画像検査で膀胱に単発広基性非乳頭状腫瘍を認め, 経尿道的膀胱腫瘍切除術を施行した.病理組織学的診断は肉腫であったが, 詳細な起源の特定はできなかった.術後経過は良好で, 術後20年間再発なく生存している.
(考察)膀胱肉腫は, その希少性から症例の集積が困難であり, 未だ治療法は確立されていないが, 外科的療法による腫瘍の完全摘除が治療の第一選択であるとする報告が多い.また最大径5cm以下の腫瘍では膀胱全摘除術と膀胱部分切除術に予後の差はないとされている.一方, 低侵襲治療である経尿道的手術による治療経験についても良好な成績の報告が散見される.一般に予後規定因子として腫瘍径, 異型度, 深達度が挙げられ, 特に腫瘍径と異型度が重視されている.経尿道的手術は, 小径腫瘍であれば単独で膀胱肉腫の完全切除を得る可能性があり, 低侵襲性や膀胱温存の側面からも一考に価する治療選択であると考えられた.
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© 2009 一般社団法人 日本泌尿器科学会
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