日本泌尿器科学会雑誌
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100 巻, 5 号
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原著
  • 野尻 佳克, 奥村 和弘, 津島 知靖, 長井 辰哉, 川喜田 睦司, 上平 修, 斉藤 史郎, 寺井 章人, 副島 秀久, 岡村 菊夫
    2009 年 100 巻 5 号 p. 563-569
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    (目的)これまでの調査で, 全国の病院における前立腺全摘除術の周術期管理にはばらつきが多いことがわかっている.クリニカルパスの手法を用いて術後管理法の標準化を目指し, 多施設共同研究を行った.
    (対象と方法)第1期(2004年1月~12月)に全国8施設において行われた前立腺全摘除術の周術期成績を集計した.その結果を各施設間で公表, 協議し, それを参考にそれぞれの施設でクリニカルパスを作成または改定した.第2期(2005年1月~2006年3月)に実際にパスを使用し, その成績を集計し, 比較検討した.
    (結果)8施設において, 第1期378例, 第2期360例が登録された.討議後に作成したパスの設定は似かよったものとなった.第2期の術後成績の中央値のほとんどはパスの設定と等しく, パスの設定どおりに管理が行われたと思われた.2つの期間で, 飲水開始日, 食事開始日, 硬膜外麻酔カテーテル抜去日, ドレーン抜去日はそれぞれ1.2±0.7日→1.3±1.4日, 1.9±1.2日→1.8±1.7日, 2.4±0.7日→2.5±0.6日, 3.8±2.5日→3.8±2.8日と変らなかったが, 歩行開始日, 持続点滴終了日, 静注抗菌薬終了日はそれぞれ1.9±0.9日→1.5±0.6日, 3.7±2.1日→3.1±2.2日, 3.6±2.0日→2.5±2.2日と早期に行われるようになった.尿道カテーテル抜去日は9.1±4.9→8.6±5.4日とあまり変化がなかったが, 術前入院期間は3.4±2.1日→2.5±1.0日, カテーテル抜去から退院までの期間は8.9±10.1日→5.6±3.8日, 術後入院期間は17.9±10.9日→14.4±9.1日と大幅に短縮され, かつばらつきも減少した.
    (結論)各施設間で成績を開示しあうことにより, 作成されたクリニカルパスは似かよったものになり, それに基づいた管理を行うことにより前立腺全摘除術の周術期管理の標準化を進めることができると考えられた.
  • 宮前 公一, 木谷 公亮, 宮本 健次, 濱田 真輔, 川野 尚, 前原 昭仁, 大塚 芳明, 大塚 知博, 濱田 泰之
    2009 年 100 巻 5 号 p. 570-575
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    (目的)前立腺全摘除術におけるリンパ節転移陽性例に関して臨床的検討し, さらに術後即時アンドロゲン除去アジュバント療法の有無による治療効果について検討した.
    (対象と方法)対象は1992年1月から2008年1月までに当院で前立腺癌に対して根治的前立腺全摘除術および骨盤内リンパ節郭清を施行した874例中, 術後pN1症例の62例.術前臨床病期と術後病理病期の特徴をretrospectiveに検討し, また血清PSAを6カ月毎に測定し0.4ng/ml以上になればbiochemical progressionと判定し全体の生化学的非再発率, 疾患特異生存率および即時アンドロゲン除去アジュバント治療群と即時治療なし群の生化学的非再発率, 疾患特異生存率について検討した.
    (結果)病理組織型はGleason 8以上が68.3%を占めリンパ節転移陽性例は悪性度が強い傾向であった.また骨盤内リンパ節転移の中で外腸骨リンパ節転移が最多であった.経過成績に関して全体では5年疾患特異生存率90.3%, 5年生化学的非再発率は67.4%であった.即時アジュバントホルモン療法の有無により5年疾患特異生存率に有意差なく, 5年生化学的非再発率において即時LH-RHアナログのみ群およびMAB療法群の方が即時治療なし群と比較して有意に高値であった.
    (考察)Retrospectiveでnonrandomizedな研究であるが前立腺全摘除術後のリンパ節転移陽性例では術後即時のアンドロゲン除去アジュバント療法が即時治療しない群と比較して再発に対して有効である可能性が示された.
症例報告
  • 平山 貴博, 松本 和将, 大草  洋, 藤田 哲夫, 佐藤 威文, 岩村 正嗣, 内田 豊昭, 馬場 志郎
    2009 年 100 巻 5 号 p. 576-579
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    (緒言)膀胱肉腫は稀な疾患であり, 一般に予後不良とされる.そのため, 現時点で有効な治療法の確立には至っていない.今回, 経尿道的手術により20年間の無再発生存を得た膀胱肉腫の一例を経験したので報告する.
    (症例)症例は35歳男性で, 主訴は肉眼的血尿であった.1988年7月, 膀胱タンポナーデのため当科緊急入院となった.画像検査で膀胱に単発広基性非乳頭状腫瘍を認め, 経尿道的膀胱腫瘍切除術を施行した.病理組織学的診断は肉腫であったが, 詳細な起源の特定はできなかった.術後経過は良好で, 術後20年間再発なく生存している.
    (考察)膀胱肉腫は, その希少性から症例の集積が困難であり, 未だ治療法は確立されていないが, 外科的療法による腫瘍の完全摘除が治療の第一選択であるとする報告が多い.また最大径5cm以下の腫瘍では膀胱全摘除術と膀胱部分切除術に予後の差はないとされている.一方, 低侵襲治療である経尿道的手術による治療経験についても良好な成績の報告が散見される.一般に予後規定因子として腫瘍径, 異型度, 深達度が挙げられ, 特に腫瘍径と異型度が重視されている.経尿道的手術は, 小径腫瘍であれば単独で膀胱肉腫の完全切除を得る可能性があり, 低侵襲性や膀胱温存の側面からも一考に価する治療選択であると考えられた.
  • 沼倉 一幸, 土谷 順彦, 羽渕 友則, 高橋 直人
    2009 年 100 巻 5 号 p. 580-585
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    11q23に位置するMLL遺伝子を巻き込む均衡転座は治療関連白血病に認められる.原因となる薬剤はtopoisomerase II阻害剤がほとんどとされているが, docetaxelによる治療関連白血病の報告は極めてまれである.我々はdocetaxelにより治療関連性白血病を発症したと考えられた進行前立腺癌を報告する.
    症例は69歳男性.ホルモン不応性前立腺癌の局所再発および肝転移に対し, docetaxel, リン酸エストラムスチンおよびcarboplatinによる 3 剤併用化学療法を行った.前立腺癌の進行は認めなかったが, docetaxel開始からわずか10カ月後に急性骨髄単球性白血病が出現した.染色体検査で 9 番染色体短腕と11番染色体長腕の転座を認め, 化学療法による治療関連性白血病と診断した.原因薬剤として臨床経過と転座所見の文献的な背景を考えるとdocetaxelの可能性が最も高いと考えられた.
  • 山中 和明, 齋藤 純, 中田 渡, 佐藤 元孝, 阿部 豊文, 森 直樹, 関井 謙一郎, 吉岡 俊昭, 板谷 宏彬
    2009 年 100 巻 5 号 p. 586-589
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    60歳, 男性.左腎腫瘍(cT1bN0M0)に対し, 後腹膜鏡補助下根治的腎摘除術を施行した.腎癌, grade3, pT1bであった.その後, 骨転移が出現し, IFN-γ投与, 放射線治療を施行したが, PDのため, IL-2 70万単位/day週5回投与を開始した.投与28日目より下腹部痛・水様性下痢が出現した.検査所見上, 著明に好酸球が増多していた.IL-2の関与を疑い, 投与を中止したが改善見られないため, 消化器内科を受診し, 大腸内視鏡検査にて潰瘍性大腸炎様所見を呈する薬剤性腸炎と診断された.その後, IL-2投与中止を継続したところ, 症状は改善傾向となった.IL-2が潰瘍性大腸炎の発症に関与するという報告は多く認められ, その投与により同様の所見を伴う薬剤性腸炎が発症したと考えられた.過去にこのような副作用報告はなく, IL-2と潰瘍性大腸炎との関連が示唆するものと考えられた.
  • 河嶋 厚成, 氏家 剛, 任 幹夫, 西村 健作, 三好 進
    2009 年 100 巻 5 号 p. 590-594
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    我々は膀胱Plasmacytoid Carcinomaの1例を経験した.患者は頻尿を主訴とする79歳男性であり, 各種検査にて膀胱内に広範囲に存在する浸潤性膀胱腫瘍を認めた.TUR-BTを施行し, 病理組織において筋層および粘膜固有層内に浸潤する小型の腫瘍細胞のびまん性増殖を認めたため, 浸潤性膀胱癌の診断にて膀胱全摘除術を施行した.右閉鎖リンパ節転移を認めたことから, M-VAC療法を2コース施行.11カ月経過した現在再発を認めていない.腫瘍細胞は, 円形小型, 豊富な好酸性の細胞質および核の偏移といった形質細胞腫に類似した組織形態を特徴としており, 免疫染色にて上皮系マーカーに濃染したことから膀胱Plasmacytoid Carcinomaと診断し得た.過去の報告から通常の尿路上皮癌と異なり, 有転移症例に対しても抗がん剤の高い効果が得られる場合もあり, 積極的な治療の必要性が示唆された.
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