抄録
(目的) 排尿異常を訴える患者の仮想内視鏡像を作成することで,形態の外観からの観察と内腔からの観察を行い,病態をより正確に評価する検査法について検討し報告する. (対象と方法) 対象は2009年3月から2010年10月までに排尿異常で当科受診した男児のうち排尿時膀胱尿道造影(VCUG)で下部尿路閉塞が疑われた22例(5~13歳,中央値9歳).22例中11例を無作為に抽出し排尿時コンピュータ断層撮影(VCT)を施行した.脱落した1例を除く21例をVCT・VCUG併用群,VCUG単独群に分け画像所見と膀胱尿道鏡(CS)所見の一致率,内視鏡手術後の奏功率を比較した. (結果) 術前診断とCS所見との一致率はVCT・VCUG併用群では72.7%,VCUG単独群では33.3%であった.尿道病変部に対して経尿道的内尿道切開(TUI)を施行しVCT・VCUG併用群では著効2例,軽快6例で,奏功率は72.7%,VCUG単独群では軽快5例,奏功率50%であった. (結語) 小児の下部尿路閉塞疾患に対して仮想内視鏡検査の方法を提示し,その有効性を検討した.結果は有効な検査であり,十分臨床に応用可能であった.今後機器の発達に伴い,膀胱尿道鏡や排尿機能を補完する検査へ発展する可能性が示唆された.