抄録
症例は69歳,男性.2002年12月に右腎癌に対し根治的右腎摘除術が施行された.術後徐々に腎機能が悪化し,2003年7月に血液透析導入となった.2010年10月に無症候性肉眼的血尿が出現し,CTを施行したところ,後腹膜リンパ節転移が認められた.分子標的治療として,ファーストラインとしてテムシロリムスを使用したが,3カ月後にprogressive disease(PD)となった.セカンドラインとしてソラフェニブを投与したところ13カ月間のpartial response(PR)を維持し現在も投与中である.テムシロリムスの有害事象としてはGrade 3の血小板減少が認められたが,減量にて対応可能であった.ソラフェニブの有害事象としてはGrade 3の高血圧が生じたが,降圧剤投与やドライウエイトの調節で対応し,血圧の下降を認めている.有害事象に対し適切に対応することで,透析患者においても比較的安全にテムシロリムスおよびソラフェニブは使用可能であった.