抄録
20歳,男性.バイク事故により受傷.右血胸,腹腔内出血(中結腸動脈右枝断裂),右下腿骨折を認め,緊急手術を施行された.術後3週間目に右水腎症,尿瘤を同定.逆行性腎盂造影にて尿管途絶があったため腎瘻造設を施行.順向性,逆行性腎盂造影を同時に施行し,約2.5 cmの尿管完全狭窄と,4.5 cmの尿管伸展不良部を診断.その後腎盂腎炎を5度繰り返し,尿路再建目的で当院紹介.約7 cmの尿管狭窄部に対する尿路再建として十分な長さの健全な虫垂を認めたため,虫垂と虫垂間膜を遊離し,尿管と端端吻合する虫垂尿管置換術を施行した.術後,利尿レノグラム検査では右虫垂尿管部の通過は良好であった.術後2年で,腎機能低下は見られていない.代用尿管として回腸尿管はよく知られているが,健常な虫垂による右尿管置換術は,より低侵襲で考慮すべき術式であると考えられる.