(目的) 副腎腫瘍に対する体腔鏡下副腎摘除術は経腹膜到達法と後腹膜到達法に大別されるが,各到達法の優位性や選択基準は明らかではない.そこで,各到達法の安全性に影響する要因を検討した. (方法と対象) 1994年2月から2013年7月に,当院で腹腔鏡下副腎摘除術を施行した149例を対象とした.経腹膜到達法は73症例75腫瘍に,後腹膜到達法は76症例78腫瘍に施行し,両群間で患者背景と手術結果を比較した.また,周術期合併症に注意が必要な症例においても両群間で比較検討した. (結果) 両群間で年齢は後腹膜到達法群が有意に高かったが(p=0.02),他の背景因子に差は認めなかった.術中出血量は両群間で有意差がなかった(p=0.091)が,経腹膜到達法群で35 mm以上の褐色細胞腫4例に500 ml以上の出血を認め,うち1例は術中輸血が必要であった.その他には両群とも重大な合併症を認めなかった. (結論) 副腎腫瘍に対する体腔鏡下副腎摘除術は後腹膜到達法・経腹膜到達法ともに有効な治療選択肢になりうるが,両者とも比較的大きな褐色細胞腫では術中出血の増加に注意が必要と考えられた.