2017 年 108 巻 1 号 p. 1-4
(目的) 乳糜漏は腹部手術後まれな合併症と考えられてきたが,臨床上重要である.泌尿器科領域の報告も散見されるが,その頻度や治療経過は明らかではない.本研究では腹腔鏡下腎副腎手術後の乳糜漏を検討した.
(対象と方法) 2005年1月から2014年12月までの10年間に,当院で施行した腹腔鏡下腎副腎手術300例を対象とした.乳糜漏の発生頻度と治療経過,関与しうる因子を検討した.
(結果) 乳糜漏は13例(4.3%)に認めた.患側は全例左側であり,リンパ節郭清術または腎門部を過剰に剥離展開した症例であった.全例低脂肪食やオクトレオチドによる保存的治療で,乳糜漏は改善した.
(結語) 腹腔鏡下腎副腎手術において術後乳糜漏はまれな合併症ではないが,大半の症例では保存的に治療しうる.リンパ節郭清や左腎門部の過剰な剥離を施行した症例では,術後乳糜漏の可能性を念頭に置く必要があると思われる.