2018 年 109 巻 1 号 p. 7-13
(目的) 近年,clinical T1の腎癌に対する治療は,術後の腎機能温存の観点から腎部分切除術が推奨されている.今回我々は腹腔鏡下腎部分切除術およびロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術の術後腎機能の変化に関連する因子について,冷阻血群と温阻血群で後ろ向きに検討した.
(対象と方法) 2006年3月から2016年7月までに当院で腹腔鏡下腎部分切除術またはロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術を施行した,単腎の症例を除いたclinical T1の腎腫瘍105例を対象とした.阻血法は冷阻血が39例,温阻血が66例であった.腎機能は推算糸球体濾過量(eGFR)および慢性腎臓病(CKD)ステージのGFR区分で評価した.
(結果) 多変量解析において,冷阻血群,温阻血群ともに阻血時間は術後12カ月後の腎機能低下率と有意に相関していたが,CKDステージのGFR区分の増悪とは有意に関連していなかった.
(結論) 今回の解析結果から,腎部分切除術において,阻血時間は予後には影響しない可能性がある.しかし,今回の検討では腎癌以外の要因で死亡した症例は少なく,各因子が全生存期間や心血管イベント等に与える影響については評価できていない.術後の腎機能低下の許容範囲や臨床的意義についてはさらなる研究が必要である.