2018 年 109 巻 1 号 p. 1-6
(目的) 腹腔鏡下膀胱全摘除術(LRC)と開腹膀胱全摘除術(ORC)の背景因子,周術期因子を比較しLRCの有用性を検討する.
(対象と方法) 当院で施行したLRC 59例とORC 57例を対象とし背景因子,周術期因子,術後経過などの治療成績について後方視的に比較検討した.
(結果) 男性103例,女性13例,年齢中央値は69歳,BMI中央値は23.0,臨床病期はT1以下:19例,T2:69例,T3:25例,T4:3例で,背景因子ではLRCはORCに比較し有意に年齢が高く(71.3歳vs. 66.2歳,P<0.001),ASA physical statusが高かったが(P=0.028),その他に有意差はなかった.総手術時間は2群間に有意差をみとめなかったが,LRCはORCに比較して総出血量(尿込み)が有意に少なく(372.3ml vs. 2,134.5ml,P<0.001),術後退院日数が短かった(23.5日vs. 36.9日,P<0.001).LRCとORCの2群間に病理学的所見について有意差を認めず,術後非再発率,癌特異的生存率も有意差を認めなかった.多変量解析では病理学的リンパ節転移のみが術後再発の独立した予測因子であった.
(結論) LRCはORCに比較して低侵襲であるが短期的な治療効果は同等であり有用な術式と考えられた.