2018 年 109 巻 3 号 p. 137-139
症例は55歳男性.2010年8月,肉眼的血尿を認め当院紹介受診.右腎腫瘍(cT2aN0M0 Stage II)の診断にて2010年11月に根治的右腎摘出術及び大動静脈間リンパ節郭清を施行した.病理診断は clear cell carcinoma,G2>>G3,v(+),pT2N0であった.術後,再発なく経過していた.2014年4月より咽頭違和感を訴え5月に当院耳鼻科を受診し喉頭鏡にて喉頭披裂間部に5mm程の腫瘍性病変を認めた.明らかな周囲への浸潤やその他の転移は認められなかった.2014年5月に経口腔的喉頭腫瘍摘出術を施行した.病理診断は腎細胞癌の転移であった.その後,再発所見なく外来通院中である.
腎細胞癌は血流に富み,血行性に肺,リンパ節,骨,肝への転移が多いことが知られているが,喉頭への転移を認めた症例は非常に稀である.また腎細胞癌は初回治療から比較的長時間経過した後でも再発転移する可能性が知られており,腎細胞癌の既往がある症例においては腎細胞癌による転移を念頭に置く必要がある.