2019 年 110 巻 3 号 p. 215-218
症例は,6歳,女児.肉眼的血尿と右側腹部痛を主訴に前医を受診した.画像診断で右腎に2~10mmの囊胞をびまん性に認め,精査・加療目的に当科紹介となった.悪性腫瘍を否定できなかったため,後腹膜鏡下右腎摘除術を施行した.病理組織検査では,腎皮質から髄質,腎乳頭にかけて大小多数の囊胞があり,被膜を持たず,正常の腎組織に囲まれた囊胞性病変でlocalized cystic disease of the kidney:LCDKと診断された.LCDKは稀な囊胞性腎疾患で,Wilms' tumorの好発年齢である10歳未満の小児ではこれまでに5例の報告しかない.非進行性で,非遺伝性の囊胞性腎疾患で,病変部以外の腎機能は保たれており,保存的治療が望ましい.しかしながら,本症例では症候性であったこと,画像診断で腫瘍との鑑別が困難であったこと,びまん性であったことより腎摘除に至った.