2020 年 111 巻 4 号 p. 120-129
(背景) 男性ホルモン除去療法(ADT)の主役はLH-RHアゴニストとアンタゴニストであるが,その副反応として局所の肉芽腫や発赤,稀に潰瘍や膿瘍形成を認める.その発生頻度と機序,血清テストステロン(T)濃度や臨床転帰に及ぼす影響についてはよく知られていない.
(目的) 主要評価項目は皮下硬結の発生頻度と,関連する原因と機序とした.副次評価項目は皮下硬結形成のT値や臨床転帰に及ぼす影響とした.
(対象と結果) leuprorelin(L群;n=161;年齢中央値75歳),degarelix(D群;n=21;76歳),そしてgoserelin(G群;n=3;76歳)使用患者185人を対象とした.L群では51例(33.5%)に自・他覚性の皮下硬結を認め,そのうち2例(1.2%)ではlarge皮下硬結を認めた.D群では,18例(85.7%)で皮下硬結を認め,そのうちの8例(38%)ではlarge皮下硬結化した.皮下注射1カ月後のT値は,L群とD群とも全例去勢域に到達していた.臨床転帰では,L群とD群間に全生存率(OS)に及ぼす効果に有意差無く,また皮下硬結形成の有無によるT濃度とOSに及ぼす影響も認められなかった.
(結論) LH-RH製剤による注射局所の反応は頻度の高い副反応であるが,その発生機序を理解し対応することにより制御可能である.皮下硬結形成がT濃度や臨床転帰に及ぼす効果は認めなかった.