2021 年 112 巻 2 号 p. 58-64
(目的) 膀胱癌患者の高齢化について検討した.90歳以上の超高齢の膀胱癌患者の治療成績を調査した.
(対象と方法) 2008年から2018年の間に当院で臨床的に膀胱癌と診断し経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)を施行した症例を対象とした.64歳未満・65歳から74歳未満・75歳から89歳未満・90歳以上の群に分け,症例数・割合を算出した.TUR-BTを施行した症例のうち,90歳以上の症例についてカルテ記載に基づいて評価した.
(結果) 75歳以上の膀胱癌患者は症例数・割合ともに増加傾向がみられた.90歳以上のTUR-BT症例はのべ39症例あり,初発膀胱癌として治療された症例は22症例であった.年齢の中央値は91歳であった.術後経過でGrade III以上の合併症は認めなかった.pT1の6例に対してセカンドTURを実施したのは2例であった.pT1またはCISの7例に対してBCG膀胱内注入療法を実施したのは2例であった.観察期間中に死亡した症例は6症例であり,膀胱癌が原因で死亡したのは2症例であった.22症例の全生存率はTUR-BT施行後1年で80.4%,3年で68.9%であった.
(結論) 高齢の膀胱癌患者は経時的に症例数・割合ともに増加していた.高リスク非筋層浸潤膀胱癌の標準治療であるセカンドTUR-BTや膀胱内BCG注入療法は,90歳以上の超高齢者では実施された症例は少なかった.