2021 年 112 巻 2 号 p. 89-95
(目的)膀胱尿路上皮癌に対する膀胱全摘除術の治療成績・予後因子・術後補助化学療法について,後方視的に検討した.
(対象と方法)2005年2月から2019年2月までに,膀胱尿路上皮癌に対して,開腹膀胱全摘・回腸導管造設術を施行した179例を対象とした.術中および術後早期合併症,術後からのOSとCSS,OSに関する予後不良因子について検討した.さらに,深達度pT3以上またはpN1~3であった症例を対象とし,術後補助化学療法の有無別にOSとCSSを比較した.
(結果)Clavien-Dindo分類Grade 4以上の重篤な合併症は認めなかった.5年,10年OSは71.1%,57.4%であり,5年,10年CSSは76.5%,71.5%であった.男性(HR=2.70,95%CI[1.07~7.51]),深達度pT3以上(HR=1.83,95%CI[1.05~3.21]),pN1~3(HR=2.85,95%CI[1.62~5.03])が多変量解析で独立した予後不良因子であった.所属リンパ節転移陽性例に対する術後補助化学療法はOS(p=0.03),CSS(p=0.017)を有意に改善した.
(結論)膀胱全摘・回腸導管造設術は有効な術式であり,術後補助化学療法は所属リンパ節転移陽性例に対して有効な可能性があると考えられた.