日本泌尿器科学会雑誌
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原著
昼間尿失禁精査を契機に診断された脊髄係留症候群の検討
森澤 洋介佐藤 裕之佐藤 温子岩佐 俊青木 裕次郎
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2021 年 112 巻 4 号 p. 168-172

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抄録

(背景) 脊髄係留症候群とは脊髄下端が尾側組織に係留し,さまざまな神経障害をきたすことをいう.中でも排尿障害は早期に出現することが多い.昼間尿失禁を主訴に泌尿器科を受診し,脊髄係留症候群の診断に至った小児症例について検討した.

(対象と方法) 2011年3月から2017年10月に昼間尿失禁を主訴に泌尿器科を受診し,脊髄係留症候群と診断された18例.脊髄係留症候群の診断契機,係留解除術前後の臨床症状の変化について検討した.

(結果) 男児9例,女児9例.初診時の平均年齢は6.3歳(範囲4~9歳).難治性の昼間尿失禁として全例にウロダイナミクスおよびVCUGを施行した.全例に脊仙MRIを施行し,その理由はVCUGおよびウロナミクスでの異常所見の精査であった.終糸脂肪腫8例,潜在性脊髄係留症候群4例,低位脊髄円錐4例,円錐部脂肪腫1例,仙骨内髄膜囊胞1例でMRIでの解剖学的脊髄係留所見を認めたのは4例のみであった.脊髄係留解除術後の平均観察期間は66.3カ月(22~116カ月)で,11例で無症状,4例は夜尿症のみが残存,3例は間欠導尿での管理となっている.

(結語) 昼間尿失禁が脊髄係留症候群の症状の一つとなっている症例が存在することを想定し,診療を行う必要がある.ウロダイナミクスでの膀胱機能評価が,脊髄係留症候群の診断契機となりうる.

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