日本泌尿器科学会雑誌
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原著
高齢患者における排尿症状質問票利用の限界についての検討
沖波 武
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2021 年 112 巻 4 号 p. 185-191

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抄録

(目的) 高齢患者における排尿症状質問票利用の限界について検討した.

(対象と方法) 回復期病棟に入院した自排尿可能な患者32例を対象とした.年齢は82.9±6.9歳(65~97歳),男性11例,女性21例であった.運動・認知機能は機能自立度評価表(FIM)と精神状態短時間検査(MMSE)を用いて評価した.IPSS,IPSS-QOL,OABSSの質問票を患者に渡し,計12項目に記入回答を依頼した.回答できなかった場合は介助した.回答状況により,自己のみで完答可,要介助で完答可,要介助でも完答不可の3群に分けてその割合を評価した.自己で回答できなかった設問数(記載欠測数)と,年齢,FIM運動・認知項目,MMSEとの相関を評価した.自己のみで完答不可となる患者背景因子を多変量解析にて評価した.

(結果) 自己のみで完答可は21例(65.6%),要介助で完答可は6例(18.8%),要介助でも完答不可は5例(15.6%)であった.記載欠測数と年齢,FIM運動・認知項目,MMSEの各因子は相関を認めた.自己のみで完答不可となる患者背景因子として,FIM認知項目20点以下(オッズ比133,95%信頼区間7.29~2,430,p=0.000965)を認めた.

(結論) 平均年齢82.9歳の高齢患者集団の34.4%は,排尿症状質問票に自己のみで完答できなかった.その要因として認知機能低下を認めた.

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