日本泌尿器科学会雑誌
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症例報告
精巣捻転症を契機に発見された精巣腫瘍合併の交叉性精巣転位症の1例
奥末 理知前田 航規森 友莉佐藤 亘原田 吉将
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2022 年 113 巻 4 号 p. 143-146

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抄録

交叉性精巣転位症は,一側の精巣が正中を越えて他側の鼠経管を通って下降し一つの陰囊に2つの精巣が存在する状態であり,非触知精巣の約2%に認められるとの報告がある.多くは幼少期に精巣固定術が行われているが,まれに腫瘍化し成人期に診断されることもある.症例は40歳男性.右側腹部痛を主訴に受診した.右陰囊内に精巣を触知したが左陰囊内には陰囊内容を認めず,右陰囊上部に有痛性の腫瘤を触知した.CTでは両側の精索が右鼠径管内を通過しており,交叉性精巣転位症と診断した.超音波検査では右陰囊上部の左精巣には血流を認めず精巣捻転症の診断で緊急手術を行った.右陰囊内には正常の右精巣と,その頭側に180度捻転した暗赤色の左精巣を認めた.左精巣は壊死していたため精巣摘除を行った.摘出標本の病理診断結果はseminoma,pT1であった.術後の腫瘍マーカーは陰性であり,術後2年5カ月間再発なく経過している.非触知精巣の捻転症の場合には交叉性精巣転位症の可能性も考え,患者の年齢に応じて悪性腫瘍を念頭におく必要がある.

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© 2022 一般社団法人 日本泌尿器科学会
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