日本泌尿器科學會雑誌
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精巣組織の精巣内同種移植に関する実験的研究
平賀 聖悟
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1980 年 71 巻 9 号 p. 1024-1046

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抄録

ラットおよびヌードマウスを用いて精巣組織の精巣内同種移植実験を行ない, 移植片の生着および生着後の機能に関して組織学的判定基準を作成し, 移植片生着とその造精機能について年齢的および免疫的要因を中心に検索した. 移植片の生着成績はヌードマウス間>幼若ラット間>幼若→成熟ラット間の順序に良好であり, 成熟ラット間の移植では全例生着しなかつた. なお移植組織が未熟なほど生着は良好であつた. 幼若→成熟ラット間の移植に対する免疫抑制 (azathioprine, prednisolone) の効果は azathioprine 単独投与例以外は生着率が向上した. 成熟ラット間移植に対しhCGによる recipient 精巣の刺激は効果を示さなかつた. 移植片の機能に関しては, ヌードマウスへの移植片は造精機能の低下と導入の遅れを認め, 幼若ラットの精巣移植片は donor が若いほど造精機能の導入は良好であつたが長期移植例では一度導入された造精機能が再び低下した. Recipient が幼若ラットの場合には未熟精巣移植片の造精機能が donor と同齢の対照に対し促進していた. 免疫抑制剤の投与により移植片は機能低下の傾向を示した. 以上より精巣組織の生着および造精機能に関しては donor の年齢的要因が重要であり, 精巣組織の成熟に伴う阻血に対する耐性の低下と造精細胞の抗原性の発現が移植組織の生着とその後の機能に関与しており, さらに生着組織の造精機能の導入には recipient 側の内分泌環境が関与していることが示唆された.

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